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真夏の蜻蛉・・・27

「げーっ!こ、皇太孫殿下ぁ!?な、なぜにぃ!!?」


ヒスンの大声が大広間中に響き渡る。
大広間中の学生の視線が、チェギョン達がいる一角に集まった。
ユルは両腕を組んでしげしげとチェギョンを見下ろし嬉しそうに指を鳴らすと、華奢な肩をむんずと掴んで腰をかがめ、彼女の顔を覗き込んだ。
ユルのそんな一挙手一投足に女の子達の悲鳴が上がる。


「君、始業式でヤラレた子、だよね」
「え?」

「一番鈍臭くて、可愛い子だったから」
「あ、あのっ!」

「いいから、いいから。シンには後で許可をもらう」
「え?許可って…」

「君を僕の相手にすること」


ユルのその言葉に女生徒達の大きな悲鳴が上がった。
ユルはそんな事はお構いなしにチェギョンの腕に自分の腕を絡めると、広間の中央に向かってスラリと伸びた脚を一歩前に出す。


「ま、待ってくださいっ!」
「待てないね」


なんとかユルの腕から自分の腕を引き抜こうとしてもガッシリとからめられた腕は梃子でも動かない。
広間までの入室を許可されていたマスコミ達のカメラのフラッシュが凄さまじい勢いで光輝く。
目も開けられないような状態でユルに引っ張られるまま広間の中央に出たチェギョンは、真正面に佇むヒョリンに気がつかなかった。


「本日は僕の誕生日を祝ってくれるためにこの雨の中をわざわざソウルから来ていただいて、とても感謝しています。煩い大人達はいませんので、どうぞ無礼講で愉しんでいってくださいね。僕の最初のお相手はCクラスのミン・チェギョンさんに勤めて頂きます」


グイッとチェギョンの腰を引き寄せたユルは、マスコミに見えるように綺麗にアップされた彼女の髪に口づけを落としてしまった。ユルの行動に騒然となった広間は、二人に駆け寄る女の子達を制する護衛やマスコミで大騒ぎになり、ユルの手をなんとか振り払ったチェギョンは、大声を上げて自分を手招きするガンヒョンを目指して走り出した。
そんな彼女を追うカメラマン。もみくちゃにされながらもチェギョンは、助けを求めてガンヒョンの方に伸ばした手を誰かにしっかり掴まれた。


「えっ!?」
「早く!こっちだ!」


黒いタキシードを着た大きな背中。マスコミの渦から逃れるように広間のカーテンの後ろに飛び込むと、そこにあった小さな扉を開けて大きな背中は中に滑りこんだ。


「急げっ!」
「う、うん」


言われるままにチェギョンは中へ入り、勢いよく閉められた扉にホッとするとヘナヘナとそこへ座り込んでしまった。
暫く外で大声を挙げていたマスコミ達も次の女の子と手を繋ぐユルの情報に大慌てで広間へと戻っていく。


「おい、タヌキ。大丈夫か?」
「え?…ってシン…く」

「ああ、いかにも俺だ。俺で悪かったか?」


からかう様に答えるシンの言葉にチェギョンはゆっくりと首を振った。


「あれ?いつもの勢いがないな?」
「…」

「どうした?」
「…」

「おい?」


座り込んだままの彼女の前に腰を下ろしたシンは、彼女の顔を覗き込んで驚いた。


「お前…泣いて、いるの、か?」


白いレースのドレスをギュッと握りしめてチェギョンは声も出さずに泣いていた。瞳から溢れる涙が頬を伝って膝を抱え込む彼女の腕に滴り落ちる。わなわなと震える唇が何かを言おうとしているが言葉にならないらしい。


激しい雨音が小部屋の窓の外に聴こえていた。となりの大広間では音楽が響いている。きっとユルが楽団に指示を出したのだろう。彼の余興とはこの事だったのか、とシンは思った。

大人達から妃候補を無理強いされる前にマスコミに今日のことを報道させ、大人達を困らせる。
ほんの僅かなユルの抵抗だ。
彼女には妃宮になる、なんていう野望は持ちあわせていない。
ただ、上流階級のパーティに興味があっただけなのだ。
それなのに…


「チェギョン…」


シンは、濡れる彼女の頬に片手を伸ばした。




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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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