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真夏の蜻蛉・・・22

開け放たれた教室の窓。
ピィーッというホイッスルの音が爽やかな風に乗って聞こえてくる。どこかのクラスが体育の授業を始めたのだろう。
RF5の一人ギョンは、器用に指先でペンをクルリと回しながら、窓側にある主のいない椅子を眺めていた。
高校生が持つにはあまりにも贅沢なロレックスの腕時計に視線を落として、そのガラス盤をなんの躊躇もなくペン先でコツコツと叩くと、自分に背を向けて座っている同じくRF5のファンの背中をツンツンとつついた。


「なぁ、ファン。」
「なんだよ?授業中だぞ。」


ギョンのペン先を煩そうに背中ではらうとファンは振り向いてギョンを睨めつけた。


「シンのやつ・・・長すぎないか?もしかしてトイレで倒れていたりして。」
「おいギョン、変な事言うなよ。」

「きっと、腹壊したんだ・・・」
「それはあり得ないだろ?昌徳宮の職員が作る食事だ。間違いがあったらそれこそコレもんだろ?」


ファンはそういうと手を首に当ててスパっと切ってみせる。


「そう・・だよな。」


授業を途中にしてトイレへ行くと姿を消したシン。もうかれこれ30分が経とうとしている。


「それにしても先生は平気な顔しているな。ギョン、お前訊いてみろ。」
「ああ、それもそうだ!」


思い立ったらすぐ行動へ移してしまうギョン。しかし、それが時々役に立つこともある。皇族がトイレに入る、それを口にするのはとてつもなく憚れる事なのだが・・・


「先生!」
「はい、イ・ギョン君。何ですか?」


片手をまっすぐあげて立ち上がったギョンを、メガネに指を掛けて見上げる数学のハン教諭。


「シンは、まだトイレから帰ってこないんですが、大丈夫でしょうか?」


ギョンの言葉に回りの生徒達がいかんせんざわついた。
そう、誰もが思っていた事だったのだが、やはり口にすることではない。


「ああ、其の件なら大丈夫です。」
「大丈夫・・って先生、どういうことですか?」


ギョンがその大きな躰を揺らす。
ハン教諭は、深く詮索するなとばかりに、手元の教科書をパタリと閉じるとメガネをかけ直して鋭くギョンを見据えた。


「碧龍君様は昌徳宮へ緊急の用事で帰りました。学校に連絡があったのです。」
「か、帰ったぁ?」

「ええ、そうです。まだ、なにか?」
「い、いえ・・・」


ギョンはハン教諭の質問に静かに首を振り、ストンと椅子に腰を下ろすと、前の席にいるファンに小声で話しかけた。


「おい、とうとうシンの腹壊しは決定的だ。帰りに見舞いに行くか?」
「おい、ギョン。今日は止めておけ。もしかして本当に急用かもしれないぞ。」

「そ、そうだな・・」











猛スピードで昌徳宮へ車を走らせたユン運転手。二人が降りた後、苦笑しながら車のドアを全開にして、ほぅっと溜息をついた。一体全体どんななりゆきでこんな事になったのかはわからないが、とにかく今日はこの車はつかえないな・・・と呟いた。

驚いたのは、ヒョン大君付きのキム内官だった。私室に入ってきたシンの腕には王立学校のスポーツウェアを着た少女がいる。しかも気を失っていて・・・・・慌てて近付いたキムはその匂いに顔を一瞬顰める。


「碧龍君様っ!こ、これは?」
「見ての通りだ、キム内官。女官を呼んでくれ。コイツの服を何とかしたい。」

「ミン・チェギョンさんですよね。カバンを毎朝取りにいらっしゃる・・・」
「ああ、そうだ。とにかく俺は今すぐバスルームに入りたい。後は任せたから。あ、部屋はゲストルームを使っていい。」

「か、畏まりました。」


ソファにチェギョンを下ろすとシンは上着のボタンに手を掛けながらバスルームへ飛び込んだ。
キム内官に呼ばれた3人の女官達が大騒ぎをして気を失っているチェギョンを取り囲む。彼女のスポーツウェアの上着を静かに脱がせ、おしぼりで顔を拭き、ゲストルームへと3人掛りで彼女を運んだ。


「ね、チョン女官。この間、碧龍君様が連れて来られた方とは違う方ね。」
「ちょっと、おしゃべりは禁物よ。いちいち詮索するのはやめなさい。女官として命取りになるんだから。」
「そ、そうだったわね。気をつけなくちゃ。」


どうやら例の匂いは彼女の下着にまで浸透しているらしく、困り果てた3人が相談した結果、直属の尚宮に相談することにした。


「尚宮様、如何致しましょう。大君妃殿下にご連絡いたしましょうか?」
「待て、碧龍君様の意向を伺うのが先だ。」


ゆったりと構えた尚宮はキム内官を呼び、この少女をどうするおつもりかと問いただした。
そして、着ているものは全部御召替えしないと駄目である・・・とも伝える。
シャワーを終えて自室に戻ったシンにキム内官は問うた。


「碧龍君様、如何いたしますか?」
「アイツの服・・・ああ、そうだった。母上には内緒だ。ヒョリンならまだしも違う女だからな。尚宮の韓服でも貸してやってくれ。あれなら多少サイズが違っても何とかなるからな。」


かくして・・・

程よい香料を垂らしたお湯で顔や躰を拭かれたチェギョンは、呑気にも夢を見ていた。薔薇の花弁が浮かんだバスタブに浸かって、今まさにお姫様気分なのである。すっきりと全部吐いてしまったせいか、急にお腹がすいてきた。


皇太孫殿下のパーティではきっと美味しいものが目白押しだろう。
それなのに・・・アイツ!
御馳走が目当てだろうなんて・・・なんて・・・・・
あれ?
いい匂いねぇ。
この布団ふかふかで気持ちいい~
ああ、まだ夢の中ね。
だけど・・・
うーーん、なんか口の中が気持ち悪い・・・なんだろ。
そう言えば、今朝賞味期限の切れたソーセージ食べてきたんだった。


「お気づきになられました?」
「・・・?」

「お口を漱がれたらいかがでしょう。きっとさっぱりと致します。」
「え?ええっ??」













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hana
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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