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真夏の蜻蛉・・・21

どうして俺は走っているんだろう。
皇族は走ってはいけないと言われているのに。
どうして・・・



保健室は校舎の1階にあった。
シンは非常階段を一足飛びに駆け降りて、廊下の一番手前にある保健室の扉を開けようとしたが近づく声に慌てて物陰に隠れる。
ガラリと扉が開けられて中からカン体育教諭とソン養護教諭、そして女生徒が3人現れる。


「ソン先生、チェギョンは大丈夫ですか?」
「ええ、ちょっとした貧血だから大丈夫よ。暫く眠れば良くなるから貴方達は教室に戻りなさい。もうすぐ終了の鐘が鳴るわ。」

「はい・・・」


心配そうに保健室を振り返る女生徒達。
ソン教諭は、心配ないと手を振ってにっこり笑った。そして両腕を組んでカン教諭を軽く睨む。


「カン先生、ちょっと走らせすぎじゃありません事?いくら体力つくりって言ったって女の子のカラダは複雑なんです。体育教諭ならご存知でしょ?!」
「ソン先生。そんなに睨まないでくださいよ。せっかくの貴方の美しいお顔が・・・」

「カン先生!!」
「いやいや、冗談です。おや、鐘ですな。コーヒーを淹れますんで、職員室へどうぞ。」

「まったく・・・冗談もほどほどにしてくださいね。じゃ、少しだけ。」


保健室の中を覗き込んで、静かに扉を閉めるソン教諭。
二人の教諭は、廊下の一番端にある職員室へと歩き出した。


「なんで俺が隠れなきゃいけないんだ?なんで俺が此処へ来なきゃいけないんだ?」


ひとりそう呟いたシン。


「アイツは俺の大切なカバンを持つヤツだろ?今日の帰りはいったいどうするのか聞くだけだ。そう、アイツが無理というならば、致し方ない・・・そう、カバンの事で俺は此処へ来たんだ。」


キョロキョロと辺りを見渡し、他の生徒に見られないよう急いで保健室へ入り、慎重に扉を閉める。
一介の皇族がやることではないとは思いつつ、シンの意識は既に引かれた白いカーテンの向こう側にあった。
開け放たれた窓からは涼しい風が静かに吹き込んで、カーテンを静かに揺らしている。


「おい、タヌキ・・・・」


シンはカーテン越しに囁いた。
しかし相手の返事がない。

召使とはいえ相手は女の子だ。
勝手にカーテンを開けてしまうほどシンは無神経ではない。


「おい、タヌキ起きているなら返事しろ・・・」


いつまでも返答がない事にシンは苛立ち、遠慮がちにカーテンの淵を指先で摘まんだ。
ゆらゆらとカーテンが揺れているだけで気配が感じられない。


「お前が返事をしないから開けるんだぞ。いいな?」


ほんの少しカーテンを開ける。
するとお団子頭が見える。
もう少しカーテンを開けてシンは急いで中へ入った。


「おい、タヌ・・・」


声を掛けようとしてチェギョンのあまりの顔色の悪さに慌てて口を噤んだシン。
じっとりと汗ばんだ額に黒い艶やかな髪が張り付いている。
思わずその額に手を伸ばしたシンは、彼女の髪に触れた。


「具合・・・悪いんだな。」


紫色の唇がほんの僅かに開かれて、苦しそうな吐息が一つ漏れ出でた。
髪に触れたシンの指先が頬を伝って、可愛らしい唇に移動しようとした時だった。


「・・・何?!」
「えっ?」


パチリと開かれたチェギョンの瞼。
黒目がちな瞳に動揺したシンの姿が映り込んでいる。


「ちょ、ちょっとシン君、今何したのっ!?」
「い、いや別に・・・」

「別にっていま此処に触らなかった?!」
「さ、触るもんかっ!お前の躰になんてどうしてこの俺が触らなくちゃならないんだ!?」

「嘘っ!触った!」
「いや、触らない!」

「王族は嘘ついちゃいけないってスニョンが言ってたっ!」
「・・・うっ」


シンを思い切り睨みつけて弾みを付けて起き上がろうとしたチェギョン。
しかし、その躰はふわりと崩れて脇に立つシンに倒れ掛った。
慌てて彼女の肩を抱いて支えるシン。
両手を額に当てたチェギョンは瞼をゆっくり閉じた。


「あ、アンタと・・・やって・・・いる場合・・じゃ・・・ないわ。き、気持ち悪・・い・・・・吐き・・・そ。」
「な、何っ!ちょ、ちょっと待ってろ、いま、洗面器・・・・」

「お、、うえっ・・・・・」
「う、うわーーー!!!!」




5分後・・・

チェギョンを抱きかかえたシンは昌徳宮へ向かう車の中にいた。
ユン運転手は吐きそうな匂いに悩まされながら早く宮へ着かないかとハンドルを握りアクセルを踏み込む。
後部座席でスマホを指先でつまんだシン。
掛ける先は、王立学校高等部。


「もしもし・・・先生申し訳ありません、少しミン・チェギョンさんをお借りすることになりました。」
『碧龍君様、一体どうしたのですか?彼女は保健室のはず・・・』

「いえ、大したことではないのですが、王室関係の事で2、3聞きたい事がありまして・・・早急な事なんです。」
『早急・・・なにか彼女が失礼を?』

「いえ、そうではありません。チェギョンさんのお宅へは私から連絡を入れておきますのでよろしいでしょうか?」
『碧龍君様がそう仰るなら・・・』

「ありがとうございます。」


自分の膝の上で一層蒼白い顔をして眠っているチェギョンを見てシンは苦笑いした。


「こいつ、ほんとにやってくれるよな・・・」













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hana
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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