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真夏の蜻蛉・・・10

明洞ギル入り口から遡ること2時間前。
非常階段で自分達の話をチェギョンに聴かれたシンとヒョリンは、気まずそうに向き合っていた。

「あいつ、知っているか?」

シンは、腕を組むと視線を下にしているヒョリンを覗き込んだ。勿論、ヒョリンは自分達の話を聴いていたのが誰かは知っている。しかし、妙にチェギョンに反応するシンの様子にほんの少し嫉妬を感じて知らないそぶりを決め込んだ。
仮にも目の前に居るのは皇太孫イ・ユルの従兄弟、碧龍君。自分が家政婦の娘と知り合いだなんて思われたくないし、かといってチェギョンに必要以上の関心を持って欲しくないのだ。

「し、知らないわ。Aクラスにはいない顔よ。きっとBクラスかCクラスの子でしょ?BやCクラスっていったら庶民の集まりよ、庶民」
「ふーん」

シンは、顔を背けて話すヒョリンの顔をじっと見つめた。

「ヒョリン、お前、王立は幼稚舎からずっとなんだろ?3クラスしかないのに他のクラスには興味がなかったってことか?」
「え?そ、そんな貴方だってずっと王立だったじゃない」

「ああ、そうだったな」
「特別クラスで知らないなら、ずっとAクラスの私が知らなくてもなんらおかしくないわ」

「ま、そういうことも、ある」

非常階段の壁に背中を預けたシンは、再び腕を組むと天井を仰ぎみた。

「お前、俺の許婚だってな」
「そ、そうみたいね」

「18歳になったらお前と婚姻するように陛下に言われた」
「…」

「お前はどうだ?」


碧龍君、イ・シン。
頭脳明晰、運動神経抜群、そしてその容姿は、皇太孫イ・ユルにも負けないほどのもの。
ただ、その皇位継承権はずっと下だ。皇太孫が妃を迎えれば、そして息子や娘が生まれればシンの妃になった自分の身分はそれよりも低くなる。大君の息子の妃ともなれば、公の場に出ることもさほどないだろう。
自分の夢はこの国、韓国のトップレディになること。幼い頃からいやいや勉強させられてきたものがお妃教育だったと気づいたのは中等部へ入る頃。それからは皇太孫の妃になることだけを心の奥で密かに愉しみにしてきたヒョリンだったのだ。


「貴方には悪いけれど、はっきり言うわね。私は貴方との婚姻を望まない」
「へぇ、意外だな。このタナボタ状態に喜んでいると思ったよ」

「私にはもっと大きな夢があるのよ。ただの妃シン・ヒョリンでは終わりたくない!」
「お前それって…」

「パパはこのお話断れないって言ったけれど、私は絶対に嫌だわ」
「陛下の命令は絶対だ」

「それでも!嫌なものは嫌よ」


ギリリと唇を噛みしめたヒョリンの様子にシンは、むしろこの状態は自分にとって好都合だと思った。
シン・ヒョリン、他人から見れば確かに生まれも育ちも容姿も文句のつけようがないだろう。だが、こうして彼女と話してみると、惹かれるものが何一つとしてないのだ。そればかりか彼女の言葉の端々に権力への欲が見え隠れする。

彼女の狙いは…


「じゃ、決まったな」
「え?」

「俺は誰か当て馬を探す」
「当て馬?」

「俺に恋人がいれば陛下だって無理は通さない筈だ。お前には望み通りユルを紹介してやる」
「わ、私そんな事、い、言ってないわ!」

「違うのか?お前皇太孫妃になりたいんだろ?」
「ちょ…」

「その根性を見込んで紹介する。だけど、ユルに会ったらそんなことおくびにも出すなよな。あいつ可愛い女が好みだぞ。どっちかっていうと鈍臭いくらいの…」


シンの頭に団子頭のチェギョンが浮かんだ。
ユルは彼女を気に入ったと言っていたのだ。
だが、先に見つけたのは自分だ。
なんでも持っているユルに今回だけは、自分が見つけた彼女を盗られたくないと単純に思ったシン。
同い年のユルと自分。
父親である大君のイ・ヒョンからは、絶対にユルを越えるようなことをやってはいけないと言われ続けて来た。勉強でも、運動でも、ユルの前では気づかれないように手加減してきた。だからトップはいつもユルだった。


「明日、学校が終わったら来い」
「え?」

「学校じゃまずいだろ?いきなり景福宮でもなんだから、俺の家にユルを呼んでおく。昌徳宮へ3時頃・・・制服のままでいいからな。待ち構えていたなんて思われたくないし」
「い、いいの?」


頬を蒸気させたヒョリンがシンを見上げた。その瞳には、反吐が出そうなくらいの野心が見え隠れする。後宮に鎮座する皇后はこれくらいの野心家でないと、数多いる内命婦や外命婦を統率する上では難しいことをシンも良く知っていた。


「伯母上にそっくり…だな。」
「え?」

「いや、なんでもない。よかったよ、お前が俺と婚姻する気が全くないって事が分っただけでも大きな収穫だ。ただあいつの口は塞がないと、あの団子頭…何を言いふらすかわかりゃしないからな」
「そ、そうね。じゃ、私は帰るわ。運転手が待っているから」


非常階段をパタパタと降りて行くヒョリン。
シンもお団子頭のチェギョンを探すべく、階段を一足飛びに降りて行った。











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hana
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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