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真夏の蜻蛉・・・8

「…でね、シン様はカメラの腕も」
「ああ、もうヒスン煩い!少し黙っていて」

チェギョンとガンヒョン、それにヒスンとスニョンは、正門を出て新しく出来たトッポキのお店に向かっていた。門を出てからずっと同じ話題を喋り通しだったヒスンにガンヒョンが一撃をくらわせたようである。

「ヒスン、あんたが皇室マニアだって言うのはわかったけれどそれを私達に押し付けないで」
「え?私達ってチェギョンはもうマニアの端くれよねぇ。ガンヒョンの皇室嫌いはしかたがないけれど、チェギョンはそうじゃないもん」

髪の毛を二つ縛りにしたヒスンがその馬の尻尾のような髪をぶんぶんと左右にふってチェギョンの顔を覗き込んだ。

「ね、チェギョンたら!聞いてるの?」
「あ、ああ。ごめん、ヒスン。なんだっけ?」
「もう!シン様の話よ」
「シン様…」

シン家のお嬢様ヒョリンと彼は結婚する。
そう、ヒョリンは王室に入るんだ。
シン家の使用人の私達にとってみればとても名誉なことよ。
未来の大君妃様にお仕えしてきたんですもの。シン家の未来は素晴らしいものになるわ。
旦那様や奥様もさぞやお喜びでしょう。一人娘を嫁には出したくないっていつも旦那様は笑っておっしゃっていたけれど、王室よ、王室。一般市民とは一線を画するのだから。

「ねぇ、チェギョン!チェギョンたら!」
「あ、ごめん」
「どうしたのよ、なんか変よ?」
「な、なんでもないから。ああお腹すいた。ガンヒョン、何処なの。そのお店」

3人から離れて駆け出したチェギョン。ディバックを前に背負って後ろ向きに歩きながら3人の顔を見ていたが、その3人の顔が一瞬凍りつく。

≪ドン!≫

後ろ向きに歩っていたチェギョン。
急に何かに、いや、誰かにぶつかって前のめりに転んだ。

「な、な、なんなの一体!!」
「それはこっちのセリフだ」

どこかで聞いたことのある声。チェギョンは恐る恐る声のする方に顔を向けた。太陽の光が逆光となって相手の顔が良く見えない。

「見つけた。タヌキ!覚悟しろ」
「えっ、えっ、えっ???」

声の主はむんずとチェギョンの腕を掴むと、滑り込むように横に停まった黒塗りの車の中へあっという間に押し込んだ。

「君達、こいつの友達か?」
「は、は、はいっ!」

ニヤリとわらった彼は、押し込んだチェギョンの隣に座ると極上の笑顔でガンヒョン達に笑いかけた。

「少しの間、こいつを借りる。用がすんだら何処で下ろせばいい?」
「は、はいっ!明洞ギルの入り口で!」
「明洞ギル、ね。判った」

バタンと閉まった車のドア。
急発進してガンヒョン達3人の前を走り去っていく。
あっけにとられていた3人は、走り去っていく車を見送ってハッと我に返った。

「ちょ、ちょっと!なんなの?チェギョンを誘拐したわよっ!」
「ガンヒョン、落ち着いて…って私達も落ち着いてられないわ。親衛隊としては由々しきことよ!チェギョンはシン様に腕を触られたばかりじゃなく、あの宮のお車に乗るなんて!シン様専用のお車よ~一体どうなってんの!?」
「ちょっとヒスン、そうじゃなくて、あいつがチェギョンを…」

ガンヒョンの言葉はもはやヒスンやスニョンの耳には入らない。思い出したようにポケットから携帯を取り出すとチェギョンのナンバーを押す。しかし、電源はすでに切られている。
警察へ連絡なんてすることはできないし、かといってチェギョンの両親に連絡するもの憚れた。

「明洞ギルの入り口で待つか…」

興奮気味の二人をその場に置いてガンヒョンは明洞ギルの入り口へと急いだ。


一方車の中へ押し込まれたチェギョン。困惑気味の運転手と護衛がバックミラーでチラチラと彼女を見ている。
シンが隣に乗り込んで急発進した車はそのまま漢江へと向かっているようだった。

「ね、なんなのよ!」
「はぁ?それはこっちのセリフだ。お前だろ?盗み聞きの達人」
「ぬ、盗み聞きですって?違うわよ。階段を上がったら自然と聞こえたのよ」
「ああ、やっぱり聞いていたんだ」
「あ」
「全部か?」
「え?」
「お前、全部聞いたのか?」

全部って…
こいつがヒョリンにプロポーズしていたってことでしょ?
聞いたわよ。
聞かれてまずかったわよね。
高校生の結婚よ。
凄いスクープだもの。

「おいっ!どうなんだっ!」
「き」
「あぁ?」
「き、聞いたかも…しれない」
「かも?おい、はっきりしろ。どっちだ!」
「き、聞きましたっ!プロポーズ!!」
「…」

大声で答えたチェギョン。
運転手と護衛は慌てて目を伏せ、聞こえなかったフリをする。
大きくため息をついたシンは、運転手に目配せして漢江の公園前で車を停めさせた。

「おい、降りろ」
「え?」
「此処で降りるんだ」
「わ、わかったわよ。そんなに怒らないでよ!」

車から降りた二人。
黙って先を歩くシンの後を不安げにチェギョンはつき従う。

川面に手が届くような場所で急に止まったシン。俯きながら後ろを歩いていたチェギョンはまたもや彼にぶつかってしまった。

「お前はそんなにこの俺に触りたいのか?」
「うっ」
「沈める」
「な、なに?」
「今日の話の内容を誰かに漏らしたなら、お前はその時点でこの漢江の底だ」
「そ、そんなこと宮がしてもいいの?」
「宮、だから出来る」
「…」

宮だから出来るって…ひょえ~そんなことアリなの!?
逃げなく、ちゃ。

「逃げるな」

伸びたシンの長い腕がチェギョンの両肩を掴む。

「ひゃっ!」
「いっただろう?逃げても無駄だ。この韓国に居るうちはお前に逃げ場はない」

ゾクリとするくらい超端正な顔立ちが目の前に迫ってくる。唇が触れるか触れないかくらいで止まった彼の口から飛び出してきたのは思いもよらない言葉だった。

「俺と契約しないか?契約を呑んだら盗み聞きをしたのは無かったことにしてやる」
「え?」










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hana
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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