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バタフライ・・・22

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両手を掴まれて動けない私の額に先輩はキスをした。全く予想してなかった事で、ただただ目を白黒させ先輩を見上げる私。

なんで?
どうして?

私の手を掴んだ先輩の手が離れていって隣の椅子に座ったようだった。何を言っていいか分らない私は、両手をギュッと握りしめ白い鍵盤に視線を落とすと、そのまま彫像のように固まってしまった。

「チェギョン。」
「・・・・」
「シン・チェギョン。君はなにもかも承知の上だって思っていたのに僕の自惚れだったのかなぁ。」

先輩は両手を組んで長い脚をペダルのほうへ投げ出し、スタジオの天井を仰ぎみているようだった。

なにもかも・・って。

先輩の言った意味がよくわからない私。
大学時代は、雲の上の存在で、国内外のコンクールというコンクールはすべて制覇したという伝説の持ち主だ。それなのにちっとも威張ったり、自慢したりすることもなく私達後輩にはわけ隔てなく優しい先輩でいてくれる。
演奏旅行で忙しい筈なのに、卒業したてのヒヨっ子ピアニストの私達を自分のコンサートに招いてくれて舞台というものを経験させてくれたりもした。

「せ、先輩。なにもかもって・・・あの、よく、わかりません、す、すみません。」

自分の横に並んだ先輩の横顔をチラリとみる。先輩の口元が自虐的に歪んで大きなため息が漏れたようだった。

「チェギョン、その≪先輩≫って呼び方いい加減止めてくれないかなぁ・・・いまだに学生のような気がする。」
「す、すみません。だ、だけど先輩は私達の憧れで・・・」
「僕には、ちゃんとした名前がある。」
「は、はい。」
「呼んでみて。」
「へ?」
「僕の事を名前で呼んでみてくれないか?そろそろ≪先輩≫は卒業だ。」

先輩の右腕が私の背後に伸びて行く。ゆっくりと掴まれた私の右肩が、ほんの少し加えられた力によって先輩の方へ引き寄せられる。

ぎゃー、なんなの?このシチュエーション・・・・

「あっ!そ、そうだ。忘れていました。ちょ、ちょっとこれから寄る処があったんです!」

先輩の手を払うように急に立ちあがった私。
先輩はそんな私を頬笑みながら見上げた。

「それは・・急ぎか?」
「え?あ、あの・・それは、その・・・そんなことは・・っていうか・・・えーと・」
「チェギョン、僕と付き合ってくれないかな。」
「えっ?つ、付き合う?そ、そんな・・あの・・・駄目ですよ、私なんて。」
「何を勘違いしている?」
「へ?」
「買い物に付き合って欲しい。女性のものだから、君に見てもらいたんだ。いいかな?」

先輩の言葉に私は慌ててコクコクと頭を振ると恥ずかしそうに俯いた。

ひゃぁ・・
び、びっくりした。
そ、そうよね、先輩だったら素敵な女性の一人や二人・・・
え?
で、でも・・自惚れってどういう意味?

ほんの少し笑った先輩は立ちあがっていつものように私の髪をクシャクシャと撫でると、どこかに電話を掛けているようだった。

「じゃ、今から1時間後に・・・はい、宜しくお願いします。チェギョン、行くぞ。あまり時間がない。」
「え?え?」

携帯の画面を閉じて私の方に振り向いた先輩は、私の片手をむんずと掴むと駐車場に降りて行き、いつものように助手席の扉を開けた。

「お姫様、どうぞお乗りください。」
「せ、先輩・・」
「言っただろ?《先輩》はやめろ。チェギョンの用事は・・急ぎじゃなかったよな?」
「は、はい・・だけど、今からですか?」
「そうだ、1時間後に届ける約束をしたからな。」
「はぁ?」

最初に寄ったのはセレブに超人気の江南のブティック。すでに連絡してあったのか、御贔屓さんなのか、先輩の顔をみるやいなやありとあらゆるドレスを目の前に並べ始めた。

「チェギョン、プレゼントする相手の歳は24歳。初めての家へ挨拶に行くのだけれど、どのドレスが一番好感を持てるだろう。」
「先輩、どれも素敵です。私なんかが選んでいいんですか?」
「ああ・・好きなのを選んでくれ。チェギョンに任せるから。」

先輩は、テラスのソファに腰を下ろすと、マネージャーが運んできたコーヒーをゆっくりと飲み始めた。
見事なドレスを目の前にしてしばし、考え込む私。
あまり、派手な感じの柄物はこの際止めておいた方がいいだろう。
ゴテゴテした飾りもいらない。
体の線が強調されたものは、初めての訪問には失礼になる。バタフライの隣のホステスじゃないものね。
ブルーとサーモンピンクの清楚な感じのワンピースが手元に残った。

「先輩、贈られる方って色白の方ですか?」
「ああ、透き通るように・・」
「じゃ、これに決めました。」
「うん?そうか。ありがとう・・・・これを。」
「はい、畏まりました。少々お待ち下さいませ。」

マネージャーが、にっこり笑って私と先輩をみると、綺麗に包んで渡してくれた。

「さて、次は・・」
「え?まだ?」
「そう、まだだ。」

車のエンジンをかけ、助手席に座った私にシートベルトを掛ける。目の前に先輩の顔が迫ってきて変にドキドキした。
漢江を渡り、南山トンネルを通り抜ける。繁華街に入るちょっと手前で先輩の車が停まった。

「さ、ここだ。降りて。」
「せ、先輩、ここって・・」

ソウル1、2を争う総合美容サロンのビルの入り口に立つ私。一度こんなところに来てみたかった。だけど、こんなに短く髪を切ってしまった私には到底お呼びじゃなく、このエントランスホールにさえ入るのは気が引けるのだ。
躊躇している私の手を引いて先輩はどんどん中に入っていく。
いくつものシャンデリアが高い天井から吊らされており、幅の広いゆるい螺旋階段がずっと上まで続いていてまるでお城の中のよう・・・

「お待ちしておりました。この方が?」
「そうです。宜しくお願いします。」

先輩はさっき購入したドレスをスタッフに渡すと、私の背中を押した。

「チェギョン、君を大事な方に引き会わせる。君のピアノ人生においてとても大事な方だ。きっと君の未来は開けるだろう。何も言わずに言われるとおりにしてくれ。」
「え?せ、先輩。どうゆう・・」

幾人ものスタッフに押されて私はホール横のゲストルームに導かれてしまった。沢山の手が私の髪に顔に指先に触れてくる。ただ茫然となされるままになっている私。

「さ、出来ました。急いで整えたにしては上出来ですわ。お嬢様がとてもお綺麗な方でしたから。ジヌク様にもきっとご満足していただける事でしょう。」

鏡の中に映る私。
その姿にしばし呆然となってしまった。










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画像はふわふわ。りさま
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プロフィール

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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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