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バタフライ・・・17

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「この私がオーストリア、夢にまで見たオーストリア留学・・・」

おば様の【上がっていいわよ】の視線を受けてそそくさと楽譜をまとめた私は、ネクタイを緩めてほんの少し汗ばんだ額をハンカチでぬぐった。
バタフライの昼間の時間はお休みだ。おば様の許可を得て、昼間はここを使わせてもらっている。5月のコンサートに向けての練習だって言って、先輩の名前を出したらおば様はすごく驚いていた。

そうよね、韓国を代表するに相応しい国際的ピアニスト、イ・ジヌクさんですもの。
知らない人はきっといないわ。
いたとしても全く音楽に興味のない人かテレビを視ない人よ。

いつものように支配人室を出た私は薄暗い地上への階段を上ろうとした。

「おい、月。ちょっと待て。」

私の行く手を阻んだのはナンバー2の風。

「なんでしょうか、風さん。僕、急いでいるんですけど。」
「なぁ、月。たまには俺達に付き合えよ。まだ歓迎会してなかったんだぞ。」
「歓迎会?」
「そう・・・隣のホステスが煩くて。お前をつれて来いって。」
「僕・・を?」
「お前が可愛いんだとさ。今夜仕事が上がったら行くから用意しとけ。」
「・・・いいです。歓迎会なんて・・皆さんと違って、ただのピアノ弾きですし・・」
「なんだ?月。付き合いが悪いなぁ。」
「す、すみません、風さん、僕・・・」

「風、無理強いするな。」

私と風との間に鷹が割って入ってくれた。「ちぇっ。」と言いながらホールに戻っていく風。ほうっと溜息をつくと楽譜の入ったカバンを胸元に引き寄せた。

あれ?
動けない?

気がつけば鷹が私の真ん前に立ち、私の体を両腕で挟み込むようにして壁に手を押しつけ、じっと私を見下ろしている。暗がりの中なのではっきりとは鷹の顔が見えない。

「あの・・鷹さん、そこをどいてくれませんか?僕、帰ります。」
「あ?ああ・・・そうだな。」

そう言いつつも一向に鷹は私の前からどこうとしない。痺れを切らした私は、壁に付いた手の下をくぐって階段を上ろうとした。

「おい、月。」

いきなり鷹に両肩を掴まれ再び壁際に追いやられる形となった私。

「な、なんですか?鷹さん・・・」
「・・・・」
「オトコなんか相手にしていたらナンバー1の鷹さんの名が廃れます。その手を離してください。」
「おいっ!」

鷹のいつにない厳しい口調と、掴まれた肩を激しく揺すられて私は驚いた。

「僕はもう帰・・・」
「月、お前・・・オンナ・・だな?」
「えっ?」
「お前は正真正銘オンナ・・だ。違うか?何年ホストをしていると思う?何年ナンバー1の地位を守っていると思う?最初からうすうす分っていたよ。」
「あ、あの・・・それは・・・」
「事情が・・あるんだろ?」
「鷹さん。」
「支配人の知り合いっていうのは本当か?」
「は・・・い。」
「金に困っているんだろ?」
「・・・・」

まるで誘導尋問のような言葉に素直に答えてしまった私は、一刻も早くそこから逃げたかった。
鷹に知られてしまった事よりも、こうして異常なまでに接近されている事の方が耐えられない。

「こんなに髪を短くしちゃって・・・売ったのか?」

髪を売った事をズバリ言い当てられて私は狼狽した。
このオトコはなんでも知っている。
とにかく逃げなくちゃ。
早くここを・・・

「おい、月。今、お前の事お客さんにバラしたら、困るよな?」
「鷹さん、まさか・・・」
「・・・黙っててやるよ。」
「えっ?」
「その代わり、俺のオンナにならないか?勿論秘密だ。」

鷹の思わぬ交換条件に驚いた私はマジマジと薄明かりの中の鷹の顔を見上げた。

「は?鷹さん・・のデスか?」
「ああ・・」
「じょ、冗談ですよね。鷹さんはバタフライのナンバー1で、こんなチンケな私なんかよりももっと素敵な大人の女性が似合ってて・・」

ダンっと鷹の両手が壁を叩く。
ビクっとした私は、一層楽譜の入ったカバンを胸に手繰り寄せた。

「お前は自分の事を何もわかっちゃいない!」
「え?」

鷹は壁についていた右手を私の顎に掛けると力任せに上を向かせた。

「きゃっ!な、なにをす・・」
「今から判らせてやる。」

近づく鷹の顔、恐ろしくてギュッと目をつぶったまま私は体中の力を振り絞って彼の胸を押してみる。びくともしないその鷹の体。互いの唇が触れるか触れないかの距離。

「イヤっ!!」
「うっ!?」

気がつくと頬を押さえた鷹がそこにいた。

「鷹さんがこんな人だなんて思いませんでした!謝りませんから!私がオトコだろうがオンナだろうが、みんなに言うのは鷹さんの自由ですっ!お好きにどうぞ!」

バタバタと音を立てて私は店の階段を必死で駆け上っていった。











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画像はふわふわ。りさま
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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