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バタフライ・・・3

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「私の何処が坊主なのよ!若干24歳の乙女を捕まえて酷過ぎる・・・・」

砕けたワインの瓶が中央分離帯に転がっている。次の信号を待って私はその瓶を拾いに再び横断歩道を渡った。一本二万ウォンのワイン。安いけれど、それなりに気に入っていた国産の銘柄だ。持っていた紙袋に急いで投げ込むと今度は転ばないように慎重に横断歩道を渡った。
今夜のご馳走はこれで一品なくなった。あとは冷蔵庫に入っているキムチと、たぶん乾いてしまったご飯だけ。

「また今夜もキムチチュクかぁ・・・聴こえはいいけれどある意味残飯整理だわ。」

ペロリと舌を巻いた私は、冷たい風に一掃コートの襟を立てて家へと急いだ。
私の家は南山洞の山裾にある。今住んでいるのは私だけ。
家族は?
・・・昔はいたの。父も母も元気でね。

「ただいま~」
「おかえり~」
「今日は寒かったわ。」
「そう、じゃ大変だったわねぇ」
「ね、今日の夕飯は?」
「キムチチュク・・・よ。」

きっと知らない人が見ていたなら、私が気がふれたに違いないって思うだろう。
必ず家を出るとき帰る時こうして一人でお喋りする。さもないと淋しくて淋しくて涙が零れそうになるから。
壊れたワインの入った紙袋を二人の遺影の前に置き小さく十字を切った。

「ね、私、ママのお友達の所に行くことに決めたわ。さもないとずっとキムチチュクよ。ママ達だってそれは嫌よねぇ。」

優しく微笑むパパとママ。
ふふふ、と私は笑って二人の顔をチョンチョンとつついた。

私に転機が訪れたのは去年の冬。
音楽大学の卒業を目前に控えたバレンタインデーだった。
いつものようにママはパパの為にチョコレートを買いに明洞のデパートまで出かけたの。何年たってもアツアツの二人だったから、あの日は外で待ち合わせしていたのね。
デパートの前でパパとママは会って、さぁこれから・・って時に、スリップしてきた一台の車が二人を轢いて行った。
警察から連絡をもらったのは、大学のピアノ練習室。なにがなんだかわからなくて言われたままに病院へ駆けつけた。並べられたベットの上にいる二人がまるで人形のようで私は激しく否定した。

「パパとママじゃない・・・ここに居るのは違う人です。」

乾いた喉が火をつけたように熱くて、目の前がうっすらと暗くなった。
バレンタインデーは嫌い。パパとママを奪ったバレンタインデーは・・・・

パパの形見の黒いコートを脱ぎ、市場で安く買った毛糸の帽子を脱いだ。この派手な緑色。目立つ色だから交通事故からこの身を守ってくれるかもしれないと思って購入した。
くしゃくしゃになった髪に指を通す。

「ははは、あのオバさん、随分と遠慮なく切ってくれたわね。自慢の髪だったのになぁ。」

自分の頭にへばりついたように生えている茶色がかった短い髪を惜しむように私は撫でつけた。髪を売ったお金はいつまでもとって置けるわけがない。
バックから一枚の名刺を取り出し、私は穴があくほどそれを見つめた。


「《華麗なる夢を貴方に~ホストクラブ:バタフライ》・・・・か。」








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画像はふわふわ。りさま
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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