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東宮殿からせわしく出ていくシン。そして、正殿へ向かうコン内官の後ろ姿を見つけ叫んだ。

「コン内官!まて!コン内官!!」
「殿下・・?」
「まったく・・・」
「はい?何用でございますか?」
「あの真っ白い部屋を何とかしてくれ!まったくおばあさまのやることは!」

シンは眉間にしわを寄せて顎を軽く摘まんだ。

「殿下、畏れ入りますが・・・」
「なんだ?」
「申し訳ございません。殿下とチェギョン様の寝室の内装は、皇太后様がお決めになったのではありません。」
「え?」
「・・・チェギョン様がお決めになりました。」
「チェギョン・・・が?」
「はい。」

シンは顎を摘まんでいた指を外して、驚いたようにコン内官の顔を見降ろした。

「最初、皇太后様がブルーの花柄にお決めになったようなのですが、チェギョン様がそちらだけはご自分に任せてほしいと・・・」
「・・・・」
「チェギョン様はそれはそれは楽しみにされていました。」

コン内官は微笑むと頭を下げた。

「チェギョン様は今は皇太后様とお暮らしですが、殿下が退院されたのちはご一緒にお暮らしになる予定でございましたね。」
「コン内官・・・」
「白は良き色でございます。何色にも染められますので。そして東宮殿に置いてあります、月下美人の・・・・」

「あっ!」


シンは踵を返すと東宮殿へ向かって左肩を庇いながら早足で歩きだした。そんなシンの後ろ姿をコン内官は満足そうに見つめると大きく頷いた。

「殿下、チェギョン様はきっと殿下をお幸せにして差し上げるでしょう。」






パビリオンに入り、シンは大急ぎで寝室の扉を開けた。

「チェギョン!」

白いソファを飛び越して、そのままにしてある現像室を覗き込む。

「何処だ?」

寝室を出てパビリオンを通り、内装工事によって皇太子妃の部屋からリビングへと変えられた部屋のドアノブに手を掛け回そうとしてふと、その手を止めた。ドアの向こうにチェギョンの声が聞こえる。

「ね、あの時の想い出だけじゃ駄目なのかな。シン君との時間はほんとに短かった。ユル君との時間の方が何倍も長いんだよね。」

    (・・・チェギョン・・)

「私、ずっと待ってたんだと思うの。あの時の男の子の言葉。だけど・・・馬鹿ね。シン君との想い出の上にユル君との毎日を重ねてしまっていた。」

    (・・・・)

「シン君の事好きよ。一緒の想い出が少なくたって・・・護衛さんと思っていたシン君に出逢った時から好きだったのかもしれない。」


チェギョン・・・
俺だって・・そうかも知れない。
お前の事、最初は解らなかった。
だけど・・・


「ね、私、シン君の事愛しているのかな?あの時の男の子がシン君だったからシン君の事を好きだって思っているだけなのかな。こんな気持ちでシン君のそばにいていいのかな。」

    (・・・・)

「いい匂い・・・ね。もうすぐ開くわ。」

大きく膨らみその先をほんの少し開けた花にチェギョンは頬を寄せた。

「いきなり怒鳴られたり、冗談言われたり、抱き締められたり、キスされたり・・・だけど、決して嫌じゃない。出来ればもっともっとシン君に触れたいって思ってしまうの。変よね。恥かしい・・女の子が言う事じゃないわ。」

「そんなことない・・・」

急に自分の背後でシンの声がしたためチェギョンは驚いて振り返った。夕闇の中に佇んだシンが、ドアに凭れて複雑な顔をしてチェギョンを見つめている。

「き、き、き、聞いてたの!?」
「ああ・・・」
「ど、ど、ど、どこからっ?」
「たぶん・・・最初から。」
「きゃーっ!」

両手で顔を覆って、チェギョンはシンの横を走り抜けようとした・・・が、シンはチェギョンの軀を右手で受け止めた。

「・・むぅ・・・まだ、だめ・・・か・・・」
「あっ!シン君、だ、大丈夫?」

痛みを堪えて俯くシンの胸を、両手で支えて心配そうに覗き込むチェギョン。

「・・・俺だって最初はお前の事なんて眼中になかった。」
「シン君・・」
「だけど、逢うたびにどんどん惹かれていったんだ。そしてあの時の女の子だと知った時、俺は嬉しかった。こうなることが最初から決められていたんじゃないかって。お前との出会いは運命だったんだって。」
「運命?」

「チェギョン、俺の事が好きか?」
「好きよ。大好き。」

「愛してるか?」
「・・・わから・・ない。」

「じゃ、どうして寝室を真っ白にした?」
「そ、それは・・・」

ふっとシンは笑うとチェギョンの瞳を背を屈めて愛しそうに覗き込む。

「ごめんな、気が付かなくて。」
「え?」
「花の色・・だろ?コン内官に言われて気が付いた。俺って馬鹿だな。」
「シン君・・・」

右手で抱き寄せたチェギョンの軀を更に強く抱きしめる。

「ゆっくりでいいから・・・俺の事をもっともっと知ってくれ。そして俺もお前のことをもっともっと知りたい。」
「シン君。」
「俺との婚約は婚姻をも意味する。もうお前は俺のものだ。」
「やだ、私はシン君の≪モノ≫ではありません。」

へへっと恥かしそうに笑うチェギョン。

「じゃ・・俺の、なんだ?」
「・・・・」

恥ずかしくて身の置き所のないチェギョンはシンの胸にその顔を埋め、ドレスシャツをギュッと握り締めた。

「宜しくな、俺の大切な人・・・」

抱き合う二人の後ろで香り立つ花。二人の愛にも勝るとも劣らない真っ白な大輪の花が今、艶やかに開いた。





それから間もなく二人の婚約が宮の広報室を通じて報じられ、王立大学では大騒ぎとなった。
今まで王族の令嬢をことごとく足蹴にしてきた皇太子が、事もあろうか極々一般人の同じ大学の下級生を妃としたのだから。二人の中を知っていたヨンスは堪え切れず二人の事を話してしまい、人気者となる。
シンの傷が癒えた冬の始めには二人の婚礼が執り行われ、チェギョンは晴れて皇太子妃となった。





東の空が漸く白み始め、景福宮のそれぞれの御門で衛兵達が交替式を執り行う頃、宮の奥深くに位置する義愛合には、婚礼の儀を済ませた二人が互いの肌を重ね合わせ、素晴らしい刺繍が施された寝具の中で軽い寝息をたてていた。

ジジジっと揺らめく蝋燭の灯りでその瞼を開けた若い皇太子妃。
夫である皇太子の閉じた瞼をゆっくりと細い指先で触れていく。

そんな彼女の手を目を閉じたまま彼は優しく握り締めた。

「起きたのか?」
「うん。」
「もう少しこうしていたい。尚宮達はもうとっくに帰った筈だ。」
「・・・・」
「儀式だから仕方がないけれど嫌だった・・・か?」
「・・・あのね。」
「うん?」
「そんな余裕なかった。」
「え?」
「尚宮のお姉さん達がいるなんて・・・頭から飛んでいた。」
「チェギョン・・・・」
「どうしよう、今になって恥かしくなってきちゃった。」

若い皇太子は、嬉しそうに自分の妃を抱きしめると耳元で囁いた。

「俺の色に染まったよな。」
「うん?」
「あの花の色が白である限り俺の色に染め上げてやる・・・・」
「シン君。」
「覚悟しろよ。」

シンは自分の腕の中で恥かしそうに縮こまる彼女を嬉しそうに微笑んで抱きしめる。
冷たく澄んだ空をまるで温めるように太陽の光が拡散し、義愛合の白い格子窓からもその光りが二人のいる部屋の中へと漏れ出した。

「チェ・・」
「しーっ!」

チェギョンはそっとシンの唇に自分の人差し指を当てた。

「私の答え・・・聞いてシン君。」
「え?」

シンは自分の腕の中で輝くように微笑む彼女の可愛らしい頬に手を当てた。チェギョンはその手に自分の手を重ね合わせてシンの耳元で囁いた。



「シン・チェギョンは、幼き頃からの変わらぬ愛でイ・シンを幸せにします・・・じゅっと・・・・」






<完>






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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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