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連理の枝・・・6

「マエヘススメ!」

ガタガタと大きなキャタピラーが目の前をすり抜けて行く。ソンギはシン・ソクの手を握り締めて連合国軍の言われる通りにその歩みを進めようとした時だった。

≪●×△■▼◆○!!!!!!≫

「JAP?」

日本刀を斜に構えて、ジリッジリッ・・・にじり寄る帝国軍人。
その場にいた5,6人の連合国軍人は慌てて銃を構えると帝国軍人に一斉に発砲した。
帝国軍人は撃たれてもなおソク達の元へ一歩二歩と近づく。至近距離から銃で撃つ軍人一人を斬り殺し、鬼気迫る勢いでソンギ達に向けてその刀を振り下ろした。

≪大日本帝国・・万・・・・・歳・・・・≫

帝国軍人の叫び声が機関銃の音でかき消されていく。

『殿下っ!!』

ソンギは覆いかぶさるソクの体の下で、瞼をギュッと閉じた。
やがて機関銃の音が止むと、おそるおそる瞼を開けてみた。日本刀を握りしめたまま血の海の中であの軍人が倒れている。カッと見開いた目と、頬笑みさえ浮かべている口元。

『・・・殿下、見てはなりません。さぁ・・・こちらへ。』
『ソク・・・ソク・・・・どうしてなの?どうして戦争は起こるの?僕、嫌だ。こんなの嫌だ。絶対嫌だぁ!!』

ソンギはソクに抱きあげられるとその首にしがみついた。

『殿下・・・もう戦争は終わります。そう・・・じきに。新しい時代がくるのです。そして貴方は皇帝に成らなければならない。父の望みです。殿下、皇帝に御成りなさい。』



皇帝に・・・・









「会長・・・会長?いかがされましたか。どこか御具合でも悪いのですか?」

チェ秘書が心配そうにデスクに座っているソンギの顔を覗き込んだ。ソンギは目頭に指を添えて大きく溜息をつくとチェ秘書を見上げた。両手に資料を持った有能な彼女の瞳が不安そうに揺らめいている。

「ああ・・・少し考え事をしていたんだ、悪かった。何処まで話した?」

ほっと安堵しチェ秘書は資料を抱え直すと、眼鏡の縁をそっと持ち上げる。

「シン坊ちゃま、ユル坊ちゃまには、ご連絡を差し上げました。お二人ともわかった・・・・と。」

「そうか、今日は・・・・」
「金曜日でございます、会長。お約束は明後日の日曜日、午後1時。きっとお二人とも素敵な女性をお連れになると存じます。」

「・・・・チェ秘書、君は本当にそう思うかね?」
「えっ?」

「私は、あの二人と約束はした。だいぶ無茶な約束だった。」
「・・・はい。」

「もし、約束が果たせなかったら、今立ち上げているインドの支社に行かせると言い渡してある。」
「会長、それは会長の本意ではないと、私は思っております・・・・・」

「ああ・・・その通りだ、チェ秘書。あの二人の反応を私は見てみたかった、追いつめられるとどうなるか・・・・」
「会長も意地悪でございますね。」

チェ秘書は静かに笑った。

「シン坊ちゃまをシン・チェギョン様の傍に置かれたのは会長のご指示でした。会長の思惑通りになったと言う事でしょうか?」

「いや・・・・願いを・・・・僅かな願いをあの娘に掛けたのだよ。」
「願い・・・・でございますか?」

「彼女は私の僅かな願い・・・だ。死をもって私を守ってくれた人の大切なひ孫・・・・あの人の・・・シン内官の血が流れているならきっと孫をシンをも守ってくれるかもしれないと・・・・・独りよがりな願いだ。あの二人がどうなるかは神しか知りえない事。ただ、私はそうなって欲しいと・・・」
「会長・・・・」

ソンギは立ち上がると、両手を後ろに組んで窓から夕闇迫る空を見上げた。多くの皺が刻まれたその頬にはうっすらと夕日が当たり、ほんのりと赤みが差していた。














同日、午後4時。

「いらっしゃいませ。」

江南のメインストリートにその宝飾店はあった。シンは磨き抜かれたガラスの扉を開けると憶する事もなく、どんどん店内に入っていく。
シャツとジーパンというシンのいで立ちに一瞬店員は訝しそうな眼差しを彼に向けたが、デザインリングのコーナーにその足を止めてケースの中を覗く彼の傍に寄ると、声を掛けた。

「お客さま、何をお探しですか?」
「ああ・・・指輪を探している。」

「プレゼント・・・でしょうか?」
「ええ・・・大切な人に・・」

「・・・でしたなら奥に専用のブースが・・・・」
「・・いや、高い物は買えないんだ。」

「さようで・・・・では、こちらは如何でしょう。石は小さめですが、カットは最高です。リングはプラチナの素材もございますが、ほとんどはシルバーですのでさほどお高くありません。」

店員がシンの目の前にいくつかのデザインリングを並べた。赤や、青、薄緑の石が星形や花型に並べられシルバー色の台座の上で仄かに輝いている。

「あっ・・これを。」

シンが指さした先のリングを店員はにっこり笑って手に取りシンへ手渡した。

「お客さま、お目が高い。石は小さいですが希少価値の高いものです。きっとお相手も喜ばれる事でしょう。」
「ああ・・・ありがとう。」

「サイズを御直しします。少々お待ちくださいませ。」













同日、午後6時50分。

「ソウルコンチネンタルガーデンホテル・・ここ・・よね。」

チェギョンはシンが指定したホテルの前に立っていた。
ソウル駅にほど近い丘に建てられたこのホテルは、上流階級の人々にとても人気があると、ナヨンからいつも聞かされていた。

「凄・・・いわ。目が回りそう・・・」

エントランスには煌びやかに輝く幾つものシャンデリアが架けられ、真っ白い大理石をふんだんに使った床は鏡のよう。


「チェギョン・・・」


シンの声にチェギョンは驚いて振り返り、彼の姿を見てホッと胸を撫で下ろした。いつものジーパンと白いシャツ、それにスニーカー。自然と肩が引き寄せられチェギョンはシンに体を委ねた。

「地下にちょっとしたバーがあるんだ。そこへ行こう・・・・」

慣れたような歩みで地下への螺旋階段を降りて行くシン。お洒落な金色の扉を開けると、ピアノの音が流れ出た。

「凄いわね・・・・生演奏だわ。」

黒いドレスを身にまとった金髪の女性が、バーの奥に設えてあるグランドピアノを弾いている。


「個室、空いてる?」


シンはバーテンダーに囁いた。

「空いております。ご案内いたしましょうか?」
バーテンダーはシンと共にいるチェギョンをチラッと見て頭を下げた。

「いや、いい・・・・・チェギョン、お腹すいているかい?」
シンはピアノを興味深そうにじっと眺めているチェギョンに声を掛けた。

「う、ううん。お昼遅かったから、まだ空いていないわ。」
「そうか・・・」

シンはバーテンダーに何か言うとバーテンダーは頷いて笑った。チェギョンの腕を取り、店の奥の部屋に進む。ドアを開けてシンはチェギョンを招き入れた。個室とはいっても10人ほどの客が入れるくらいの大きさ。座り心地良さそうなレザーのソファがガラスの大きなテーブルを真ん中にしてぐるりと配置してある。照明は極力落とされ、アロマキャンドルが3つ、テーブルの上でゆらゆらと揺れていた。

「ここに・・座って。」
「う、うん。」

チェギョンはソファに座り、テーブルの上のキャンドルに手をかざそうとした時、誰かがノックした。

「どうぞ。」

シンの答えに、総支配人のネームを付けた初老の男性が入ってきて彼に親しげな眼差しを向けた。

「坊ちゃま、お久しぶりでございます。半年ぶり・・・でございますか?」
「ああ、コン総支配人。急ですまなかった。」
「とんでもございません。いつでもご用意いたします。あの・・こちらの方が?」
「そうだ・・・俺の大切な人だ。」
「そうでございましたか・・・どうぞ、本日はごゆっくりなさってくださいませ。すべて整えさせていただきました。」

チェギョンはシンと、この初老の男性の会話を黙って聞いていた。バーテンダーがノックをして中に入って来る。トレーの上に乗っていたグラスを二つ、コースターを敷いた上にゆっくり置いていく。
カラン・・・と涼しそうな氷の音が響いた。

「失礼します・・・こちらの女性にはミモザをご用意しました。坊ちゃまは、いつもの・・・で宜しいですね。」
「ああ・・・ありがとう。」

バーテンダーと総支配人は二人にお辞儀をすると静かにドアを閉めて出て行った。

「シン君、坊ちゃまって・・・」
「チェギョン、まずは乾杯しよう。俺のギブス切断式を祝って・・・・」

チェギョンの質問には答えず、冗談めいたように言うシン。
カチンとカクテルグラスを交わすと、シンはグラスの中の液体を静かに飲み下した。チェギョンは恐る恐るグラスの端に唇をつける。

「美味しい・・・」
「それはシャンパンをベースにしてオレンジジュースと割ったカクテルだ。お前、酒に弱いからな。今日は俺が傍にいるから安心して飲めよ。」

シンはチェギョンの額を人差し指で突いて笑った。

「う・・ん。」

時折軽快なジャズのピアノの音が扉を通して漏れ聴こえてくる。チェギョンはシンの顔を見つめる事が出来なくてグラスを握り締めると視線を落とし、自分の膝がしらを睨んだ。シンのグラスの氷が微かに音をたて、テーブルの上に置かれた気配を感じる。
チェギョンはシンが口を開く前に此処から一目散に逃げ出したいという思いに駆り立てられていた。

『坊っちゃま』と呼ばれている理由を答えようとしないシンに、その答えを自分でとっくに出していたチェギョンは、心を鎮めるために握りしめたグラスを再び唇に当て、残りを飲み干していく。カクテルのアルコールが喉の奥で滲み、チェギョンは空になったグラスをテーブルに置くと、本当は言いたくなかったその言葉を絞り出すようにして言った。


「シン君・・・話って・・・なに?」


シンは弄んでいたグラスから手を離した。ほんの僅かな時間だったかもしれない。しかし、チェギョンには途方もなく永く永く感じられた。
テーブルの上に置いてあるアロマキャンドルの炎が揺れ、ジジッと音がして、蝋が外へ零れた。


「チェギョン・・・俺が今から言う事、驚かないで聞いてくれるか?」
「シン君が・・言う事・・・」

「そう・・・だ。」


零れ落ちる蝋の匂いが部屋中に漂い、チェギョンはギュッと目を閉じて下を向いた。




お願い・・・お願い・・・あのおじいさんの孫だなんて言わないで・・・どうか・・・神様!
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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