FC2ブログ

白い薔薇と蒼い月・・・2

舞踏会。
この煌びやかな世界は今の私には無縁の世界、そう思っていた。
部屋に籠りがちな私を心配して、父や母は躍起になって知り合いの王族の舞踏会に行かせる。
心を閉ざして5年の歳月が流れた。

舞踏会に来たのはこれで3度目。
慣れない場所で、多くの人々と接していささか私は疲れていた。
ふと、扉の向こうに庭が見える。壁際の椅子に腰かけていた私は、他の人には気付かれないように静かに立ち上がると、その扉をゆっくり押した。

流れ込む夜の風が心地いい。
長い石段を降りるとそこは一面薔薇が咲き誇っていた。
蒼い月明かりに浮かびあがる白い薔薇。芳しい香りに誘われて庭園中央へ歩んでいく。薔薇の生垣を越えるとそこには小さな噴水があった。


「素敵・・・・なんて素敵なのかしら・・・・」


ほう・・と溜息をついて私は噴水の水面に映りこむ蒼い月を見つめた。
心を引き裂かれる想いでその手を離してしまった彼のよう・・・・

寂しい、
寂しい、
寂しい・・・

踊りを踊ることは嫌いじゃない。むしろ、大好きだった。
私は両手を月に向かって挙げ、静かにワルツのステップを踏み出した。
ああ・・・ここに彼がいてくれたらどんなに幸せだったろう。この両手を掴んで一緒にダンスを踊ってくれたあの日。
あの日が忘れられない。
何度も溜息が出てしまって、思わず涙が出そうになってしまって・・・・


「何処だ!何処にいる?」


垣根の向こうから聞こえる兄の声。
今回の舞踏会はいつもと違うから決して途中で席を立たないように・・・と、きつく言い渡されていたことを思い出した。
そう、私を誰かに引き会わせるらしい。これは兄の思惑ではなく、父や母の思惑。兄はただそれに従っているだけ。


「出てこい。舞踏会はもう始まっているんだ!」


私は誰にも逢いたくない。ましてや、この心を誰かにあげるなんてことは到底できない。


逃げ出した。
ハイヒールを脱いで。
どこか遠くに行きたかった。
白い薔薇の花びらが舞い散る。垣根の向こう側に身を隠そうと薔薇の棘で腕が傷つくのも構わず分け入った・・・がそこには先着がいた。
月明かりはあるが逆行になって顔が良くわからない。背が高い人なのだろう。その人の胸のあたりで自分の視線が止まった時、兄の声が再びすぐ後ろで響いた。


「どこだ?」


もう、駄目。兄に見つかる!どうしよう・・・・・


突然の事だった。
目の前の人にいきなり抱きすくめられ、唇を塞がれた。だけど、果てしなく優しいキス・・・息もつけないのに決して乱暴ではない。
名前も顔も分からないのに、なぜか懐かしくて、なぜか涙が出そうになって・・・


「おっと・・・失敬・・・邪魔したな。」


兄はそう言ってここから去っていく。私がここにいるのに・・・・
この兄から私が逃げたと言う事をこの人は知っているのだろうか。わざとこんな事をして私を助けてくれたのだろうか。

いけない。

いつまでもこんな状態を許しているなんて私らしくない。この腕から逃げなければ、この腕から離れなければ・・・
見ず知らずの人に唇を許してしまったなんてどうかしてる。


「お願い・・・離して・・・・」


精一杯の言葉でつぶやき、両手に力をいれて私は目の前にいる人の胸を押した。再び蒼白く光る月が其の人の後に現れる。私は恐る恐る、目の前にいる人の顔を仰ぎ見た。


・・・・・・どうして!?どうして、ここにいるの?


私は彼の顔を見つめ言葉を失った。

目の前にいる彼は逢いたくて逢いたくて堪らなかった人。
でも逢うことは許されない人。
何度も夢に見て、朝、自分の顔に涙の跡を見つけた時、また哀しみが襲ってきて仕方がなかった。
ここにはいられない。彼の前にはいられない。
まるで初めて出逢ったかのように微笑んで私を見下ろす彼。そんな彼の腕を突き放して私は裸足のまま再び駆けだした。
兄からも、彼からも私は逃げ出すしかなかった。



胸に刺さったままの棘が5年の歳月を経てまた痛みだす・・・・・
スポンサーサイト



- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
05 07
プロフィール

hana

Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

コメント入力に関しましては、お名前と内容だけで大丈夫です。アドレスやPWは無用ですよ~

訪問者数
新着
☆彡カテゴリ☆彡
♪りんく♪
月別アーカイブ