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比翼の鳥・・・12

「・・・・ギョン・・・・チェギョン・・・・チェギョンったら!」

「ナヨン・・」

「私の声が聞こえなかったの?大丈夫?」
「ご、ごめんね。考え事していたから。」
「どう?イさんの具合・・・・」

大学の通用門でナヨンは、うつむいて疲れたように歩くチェギョンの肩をそっと抱いて話しかけた。

「うん。最近は顔の腫れも引いてだいぶいいわ。頭部の検査もしたけれど異常はないって。だけど、お世話になった人が亡くなってしまって・・・」

「チェギョン・・・・貴方のせいじゃないし、イさんのせいでもないでしょ。元気出しなさいよ。・・・・ね、少し痩せたんじゃない?ご飯しっかり食べてるの?」

「・・う・・うん。あんまり食欲がなくて・・・・ナヨン・・・・ごめん。これから一度家に戻って、病院に行かなきゃいけないから・・・またあとでね。」

チェギョンは肩に掛かるナヨンの手をやんわりと外すと急ぎ足で通用門を出た。













「308号室・・・・よしっ!」

チェギョンは、背筋を伸ばしていつものように満面の笑みを作ると、シンの待つベットに歩んで行った。カーテンに手を掛けようとして誰か中にいる事に気付き、チェギョンはその手を止める。

「・・・で、今回の事故は不発弾が原因であってグループ側は一切関係ないと言っているのか?」

「はい。保障の方は弁護士を通じて行う手筈になっております・・・・・会長は、被害者のご家族への謝罪をするようにと常務にお命じになったのですが、一向に・・・・」

「行ってない・・・・」

「はい。」

シンはベットの背もたれを少し起こしてメモ帳をチェ秘書に渡した。

「ここに、被害者の名前と住所を書いておいてくれないか?一緒に働いていた仲間なんだ。知っておきたい。今はこんな状態で俺はなにも手伝う事が出来ないのが悔しい。」

「・・・・」

「じーさんの体調が心配だ。あれからどうなんだ?」
「はい、私からも急激な運動や刺激のある事はおやめ戴くように話してはありますが・・・・」
「あのじーさんが貴方の言う事をきくとは思えないが。」

チェ秘書はメモをシンに返すと立ち上がった。

「・・・でもようございました。回復も早く、もうすぐ退院も出来るそうですね。」
「ああ・・・運が良かった・・・・」

「では、私はこれで。会長に何かご伝言はありますか?」
「いや・・・・あっ!礼を言ってくれ。」

「お礼・・・・ですか?」

「ああ、じーさんのお陰で俺の人生が変わった。」
「畏まりました。」

椅子がガタガタと鳴り、シンと話していた女性が出てくるようだった。チェギョンは聞いてはいけないものを聞いてしまったような気がして、慌てて病室から出て給湯室に駆け込んだ。


会長?・・・・常務?・・・・・じーさん?・・・・・・・謝罪・・・・どういう事?
集中治療室の前でも、似たような事があった。
自分の孫じゃないって言っていたおじいさん。
でも、あの時・・・・エレベーターに乗る時、お医者さんが、『会長』って呼んでいた。
やくざ?マフィヤのボス?・・・・
でも、そんな世界に『常務』なんて言葉はないわ。


チェギョンは頭を大きく横に振ると胸を抑えた。
何かが、触れてはいけない何かが胸の奥に棲みついたような気がした。
シンへの疑問。シンの家族への疑問。シンの・・・・・

女性が病室を出ていった。チェギョンは大きく深呼吸をする。


もし、シン君に何か『隠し事』があったとしても、それは何か『重大な訳』があるはずだから・・・・そう自分に言い聞かせた。
いつかは聞かせてくれるに違いない。それまでは、今日の事は胸にしまっておこう。


給湯室の鏡に向かって、これでもかってくらいに笑顔を作ってみる。どこか無理したような笑顔。

「ダメダメ、こんな顔じゃ。」

頬をパンパンと叩いてチェギョンはシンの待つ病室に向かった。一番奥のカーテンを握り締め、深呼吸をするとシャーっと勢いよくカーテンを開けた。


「シン君、どう?」


これでもかっていう満面の笑顔でシンに微笑んだ。

「チェギョン!遅いぞ。退屈していたんだからな。」
「ごめんね。ちょっと手間取っちゃって・・・・」

チェギョンは抱えていたバスケットを開けて薄い包みをテーブルの上に置いた。シンは興味津々でその包みを覗く。

「何を持って来たんだ?」
「うーんとね、お好み焼!」
「オコ・・ノミヤキ?」
「これね、私が小さい頃よくパパが作ってくれたのよ。チヂミと似ているけど、具がたくさん入っているの。美味しいわよ~」

チェギョンは包みを開くとそれを一口大に切り、シンの口元に運んだ。

「はい。アーンして!」
「えっ?」
「だから、アーン・・・・・」
「チェギョン・・・ちょっと恥ずかしいよ・・・・」
「えっ?言う事訊かないならもう此処には来ないからっ!」

シンは慌てた。
それは困る。毎日チェギョンが来てくれるだけで、元気になれるような気がする。

「チェギョン・・・カーテン・・・閉めてくれ。」
「・・・・わかったわ。」

チェギョンは恥かしそうに俯くシンの顔を見て笑った。カーテンを閉めて他の患者や家族に見えないようにすると、シンは大きな口を開けた。

「どう?美味しい?」
「ほぉいしぃ・・・」

彼女の笑顔は、どんな食べ物より美味しいなんて口が裂けても言えやしない、とシンは思った。

ずっとこのままシン君との優しい時間が止まったらいいのに、とチェギョンは思った。



いつもは大学の出来事や、アルバイトの話などを機関銃のように話すだけ話すと帰るチェギョンだったが、お好み焼を食べ終わると急に押し黙ってしまった。

「どうしたんだ?チェギョン・・・・今日はお喋りはないのか?」

シンは左手を伸ばして、チェギョンの髪に触れた。いつもはそうやって髪を撫でて自然に彼女の唇に触れていく。しかし、髪に触れた瞬間彼女はビクッと軀を震わせ、やんわりとシンの手を取って髪から外した。

「あの・・・・お湯汲んでくるね。」

あわてて、ポットを携えるとカーテンを開けて小走りに出て行く。

「どうしたんだ?」

チェギョンの行動を不審に思いながら、シンはふと右足を覆っているギブスに視線を落とした。
あの事故で亡くなったのは4人。親父さんもだった。
もし、あの時死んでしまったら自分の想いは彼女から離れる事が出来ず、永遠に彷徨っていただろう。
彼女は自分の全てだ。
彼女を手放すなんて考えられない。
たとえ後継者の地位と引き換えだと言われても、後継者の伴侶として彼女は不適当だと言われても・・・俺は・・・・俺はチェギョンを選ぶ。

比翼の鳥がそうであるように、一人でも地を這う事は出来るだろう。しかし、、未来に向かって飛び立つためには、彼女がいなくては飛び立てない。
そう・・・・チェギョンは俺にとって大切な右の翼。
いつかは話さなければならない。自分の事、グループの事。でも、その前にやらねばならないことがある・・・・



「シン君、おまたせ・・・・」
ポットにお湯を汲んで来たチェギョンは、シンにお茶を入れると、ストンと椅子に座りこんだ。

「シン君・・・ちょっとだけここに・・・・」
頭をシンの駆け布団の上にコテンと置くと、そのまま瞼を閉じた。

「チェギョン・・・・・・疲れていたんだな。ごめんな。」
シンはチェギョンの柔らかい髪に指をさし入れると、何度も優しく梳いていた。


「これからどんな事が起ころうとも、お前を絶対離さない・・・・・」


そう呟くシンの言葉を耳にしたチェギョンの頬に、一筋の涙が伝った。
シンはまだこの時、彼女の涙に気づかずにいた。それがこれからの二人にとってどんな意味を持つのかも・・・・・
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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