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ハジメテノコイ 番外編

ここは、鍾路の古くからある由緒ある映画館。

我らがシン殿下の御友人であるギョン様が、全国学生映像コンクールで栄えある最優秀賞に輝き、本日はその映画の上映と関係者の舞台挨拶がされるとあって、我が親衛隊は乙女心をトキメかせ、シン殿下のご登場を今か今かと待っていた。


それがどうよ!


舞台中央で我らのシン殿下は、チェギョンという大したことない女を引き寄せ、スポットライトの中で公然とキスをしている。
周りの軽薄な者どもは、そんな公の場を利用したキスに、いたく感じ入ったようで、馬鹿丸出しで拍手をし、なんと大声で、祝福の言葉まで叫ぶ有様。

我が親衛隊はなすすべもなく、ただただそんな羨ましい二人を観客席から見ているだけであった。
隊長スジン様は、目を皿のように見開いてしばし固まったまま・・・・・・






たしか、号外が出た次の日、隊長スジン様は殿下に手を引かれて何処かにお隠れになった。シン殿下とは親密なご関係であったはず・・・・・それから、本日の殿下の舞台挨拶では、隊長スジン様自らの御手で、25万ウォンもする花束を渡す手はずになっていた。

客席も前日から交代で映画館の前に並び、舞台中央1列目を右から左まで我ら親衛隊で独占した。なにもかも、隊長スジン様の思惑通りだった。

我らのシン殿下が舞台左手から登場した時、すかさず隊長スジン様が25万ウォンの花束を片手にシン殿下の元へ駆け寄り、テレビカメラの前で花束を手渡して、にっこり微笑む・・・・・

しかし、いきなり照明が落とされ真っ暗闇の中、手探りでその行動を起こすのは危険すぎた。
もしかしたら、チェギョンという大したことない女に25万ウォンの花束を渡しかねない。

周りの観客も急に照明を落とされたため、ぶーぶー文句を言っている。


ところが、再び一つの照明が舞台中央に当てられた時、何と我らがシン殿下は何かを囁き、あのチェギョンという大したことない女の前に膝まずいてしまったではないか。

しかも一国の姫に対してよくやる隣国の王子求婚スタイル!!

シンデレラ?白雪姫?オーロラ姫?・・・・と、とにかくありとあらゆるお伽話に出てくるあの白馬に乗った王子様の求婚スタイルだ!


何を隠そう我らがシン殿下も馬に乗られる。
そして・・・・うふん♥・・・すこぶるカッコイイのだ!!!!


姫、アイシテル。さあ我が城へ・・・・・


シン殿下も御多分に漏れず、あのチェギョンという大したことない女にアイシテルと言ってしまった。
そして見つめ合って・・・・・・キス。


そ・・・・そんなぁ!!!


我ら親衛隊の誰もが、声にならない叫び声を上げた・・・・・・・

舞台中央1列目というのもイケなかった。よりにもよって、あの二人のキスが目の前なのだ。

ど真ん中に座られた隊長スジン様からは距離にすると1メートル50センチ。

何度も繰り返されるキスの音が尋常ではなく、互いの唇を吸い上げる音が我ら親衛隊を襲ってくる。
至近距離からよく観察すると、なんと我がシン殿下、チェギョンという大したことない女の口の中に殿下自らのナニを入れているではないか!


ディ・・・ディープキス・・・・・・・
高校生らしからぬこの行為・・・・・・いやいや、シン殿下は来年には妃を娶る御身。これくらいは許される・・・か。


あまりの殿下の求愛の凄さに、我ら親衛隊員は隊長スジン様の顔色を窺い、思わず背筋が寒くなってしまった。
こめかみに青筋が走り、その唇はワナワナと震え、25万ウォンもした花束は散り散りになって、隊長スジン様の御足の下で無残な姿を呈している。


「ス・・・スジン様・・・・・お気になさらないで・・・・・」


危険も顧みず、おバカな隊員の一人はスジン様を慰めようと傍に寄ったが、ものの見事にビンタを食らってしまった。

シン殿下の熱くて、もの凄いキスはいつまで続くのか・・・・・


10秒
20秒
30秒
40秒
50秒
1分!
1分10秒
1分20秒
1分30秒・・・・・・・・


「馬鹿らしい!帰るよっ!!!」


隊長スジン様の金縛りが解け、我ら親衛隊は一斉に立ち上がった。

隊長スジン様を先頭に、キスをしまくっている殿下達の前を通り抜け、ホールに出た。いきなり明るい所に出たのでとても眩しい。


「・・・・解散よ・・・」


えっ?
隊長スジン様、い・・今なんとおっしゃった?

「アンタ達、もう殿下の親衛隊は解散よ!バカらしくてやってられっかっ!!!!」

こ・・・これが財閥令嬢のもの言いか?
元隊長スジン様は、迎えの車に乗り込み行ってしまった。ホールに残された元親衛隊のワタシ達・・・・・









なにはともあれこれで良かったのだ。
来年は大学進学でお金がいる。
なにしろ親衛隊会費が1年間で200万ウォンもするのだから、薄給の父の稼ぎでもらうお小遣いだけでは足りず、この法外な会費の為に実はアルバイトまでしていたのだ。

やれやれ・・・・・・・これで退会費用50万ウォンも払わなくて済みそうだ。
シン殿下とチェギョンという大したことない女に感謝すべきか・・・・・



親衛隊備忘録【最終章】より  
隊員№4  ぺ・ハヌル





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プロフィール

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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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