FC2ブログ

44-蒼天常在 1

降り注ぐ火の粉と爆風と暗闇でチェギョンは目の前がほとんど見えなかった。

「ガンファンさん!彼らが!駄目です!」

そう叫んだがガンファンの強い力で車に押し込まれた。
外は火の海に包まれている。ガンファンはその中、車を急発進させた。

「うそ、、うそでしょ?」チェギョンは両手で顔を覆った。
「妃宮さま。彼らは必ず戻って参ります。大丈夫です。」

チェ尚官はそう言ってチェギョンを抱き寄せたがチェ尚官の目もまた潤んでいた。

「チェさん。ホテルはやはり危険です。安全を考えて別の場所にいたしました。」ガンファンが言った。
「どちらでしょうか。」
「ジウ先生のお宅です。あそこなら間違いなく安全だ。」
「左様でございますか。わかりました。」
「チェ尚官お姉さん。どういうことなの?どうしてこんなことが?お姉さんは知っていたの?」
「私の口から申し上げることは出来ません。いずれはっきりと殿下からお話しがございますでしょう。」
「シン君から?シン君は知っていたの?何で?彼らは、彼らは無事なの?」

チェギョンの体は震え頬には涙の筋が無数についていた。
チェ尚官に寄りかかったままチェギョンは茫然としていた。どうしてこんなことが起こるのか。チェジュンを彷彿させる元気で愛嬌のあるヨンジュが、いつもお世話になっている翊衛士のヨンピョルお兄さんが。シン君、どうしよう。ねえ、どうしよう、、、。

「着きました。」
「皇弟妃さま。ご無事で何よりです。どうぞこちらへ。」
「ジウ先生、、ありがとう、、ございます、、。」
「お茶を用意しましょう。マリア、皇弟妃さまをリビングにご案内差し上げて。」
「ええ、わかったわ。ジウ。さ、こちらへどうぞ。」

リビングにはキャンドルが灯されほのかに心地の良いにおいが立ち込めていた。

「私、アロマセラピストなの。」マリアは優しく微笑んだ。
「ホッとする匂いですね。」チェギョンは力なく微笑んだ。

キャンドルの光を見つめながらチェギョンは目を瞑った。

『妃宮さま、僕は大丈夫です!すぐに行きますから!』
ヨンジュ、大丈夫よね?すぐにその笑顔で会えるわよね?
『チェギョン、愛している。』シンの顔が浮かぶ。
シン君、どうしよう。ねえ、シン君。お願いだからそばに来て、、どうしたらいいの?


「だいぶ憔悴されているようですね。」ガンファンが別室で携帯を握っていたチェ尚官に言った。
「ユ家の私服護衛官を弟のように可愛がられていたのでお気持ちが高ぶられているのでしょう。」
「彼らからの連絡は?」
チェ尚官はただ首を横に振った。
「ですがこの非常事態を抑えることが、彼らの第一の任務でございます。きっとそのために奔走しているだけのこと、そう信じております。」
ガンファンも頷いた。


ん、、、?
『チェギョン、起きろ、朝だぞ。』
ン、、シン君、、朝?シ、ン、く、ん、、?

カーテンの隙間から柔らかく差し込む日の光の向こうシンが見えた気がしたチェギョンはゆっくりと起き上がった。
あ。いつの間にか寝てしまったのね。ここは、、?
チェギョンの頭がゆっくりと思考をし始め昨日のことが脳裏によみがえる。

「ヨンジュ、ヨンピョルお兄さん!」

チェギョンはハッとしたように立ち上がった。

「お目覚めになられましたか?皇弟妃さま。」ジウがドアを開け入って来た。
「ジウ先生。チェ尚官お姉さんは?それから、ヨンジュ達は?」
「チェさんはチン ガンファンさんと朝早く人目につかないように元のお住まいにお荷物を取りに戻られました。ご一緒にいた方々に関してはまだはっきりとした情報は無いようです。」
「まさか、、。」チェギョンは絶句した。
「ただ、今朝一番にチン ガンファンさんが地元の警察に非合法に問い合わせていますが、今のところ遺体などは見つかっていないようですから。」
「本当ですか?」
「ええ。もちろんです。」
「望みはあるのですね、、。」チェギョンは呟いた。


領事館は上へ下への大騒ぎだった。
『皇弟妃さまの安否は、、?クォン代理領事はどうしたのですか?』
電話の向こうキムのイライラした声が響いていた。
「クォン殿は現在本国との連絡に追われておられます。こちらへはおいでになれないようですね。私と父とでこちらの一般業務は問題ございませんでしょう。間もなく本国からキム殿に今後の指示が出るとのことですのでそちらでご指示をお待ちくださいますように。」
『わかりました。チン名誉理事、どうぞよろしくお願いいたします。』
「お任せ下さい。」ガンファンは電話を切った。
「みなさん、クォン代理理事は今奔走されていますのでどうぞみなさんは落ち着いて通常業務をこなしてください。くれぐれも下手な口はお開きにならないことです。このことにおいては下手な動きは反乱者と烙印を押される可能性が十分ありますよ。皇宮警察がすぐに入ってくることでしょうから。」
「皇宮警察が、、。」皆ざわついた。ある意味秘密警察のように噂されるのだ。
「その怖さはご存じでしょうから口は閉じて何も語らない方が無難です。いいですね?」
「もちろんです。」皆口々に頷いた。
「クォン代理領事への連絡や指示を仰ぎたい場合私におっしゃられてください。すべては本国より了解を得て私が責任をお持ちします。よろしいですね。では持ち場に戻られてください。」
ガンファンはちりじりに持ち場へ戻った皆を見送り代理領事の部屋に腰を下ろした。
「さて、、と。あとはご到着を待つばかりか。」ガンファンは呟いた。









「間もなく到着いたします。ご用意を。」コン内官がシンの耳元で言った。
「わかった。」帽子を目深にかぶりイヤホンを挿したままずっと目を瞑っていたが眠れるわけはなかった。無事だとは聞いているもののその姿を目にするまではいや、手にするまでは心のもやもやは晴れそうもない。ゆっくりと目を開けシンは窓の外に目をやった。

マカオ。チェギョンをこの地に送ってもう一年をとうに過ぎている。
あがいてもあがいても到達できないその場所に何度も苛立った。
だが。今度こそこの手に取り戻し居るべきところへ連れ帰るのだ。
シンは拳を握り心に固く誓った。チェギョン、もう少し。もう少し待ってくれ―

到着ゲートの向こう見慣れた男性がプラカードを持って立っていた。
―アジアを巡る旅御一行様ようこそマカオへ!―
ヨンジュン。無事だったな。シンはホッと胸をなでおろした。

「それで、状況は?」

一行は旅行者を装いながらホテルへと移動しその部屋の一室でシンはヨンジュンと向かい合った。

「はい。妃宮さまの翊衛士一人と弟ヨンジュが若干負傷いたしましたが命には差し支えないありません。もちろん、すべての人物は拘束いたしました。」ヨンジュンも顔に傷が見られる。
「よくやった。ヨンジュン。礼を言うぞ。」
「はっ。ありがたきお言葉にございます。」
「怪我をした二人はどこに?」コン内官が尋ねた。
「はい。チン ガンファンどのの手配で、極秘に病院で手当てを受けております。ヨンジュは火傷と右肩の骨折、翊衛士チョン ヨンピョルは火傷を負いました。」
「そうか。チン ガンファンが。」シンの脳裏にヘミョンと笑いあう笑顔のガンファンが浮かんだ。
「はい。すべて極秘に事を進めてくださいました。お陰で彼らの治療もすぐに受けることが出来ました。」
「そうですか。大したことはなさそうですね。不幸中の幸いです。」コン内官は頷いた。

「今、皇宮警察がクォン ソンモを取り調べています。誰の指示かはもちろん口を割りませんが少しずつ疲れが見えていますから。あの手の高級官僚は帰って音を上げやすい。それともう一つ。興味深い流れがあるようです。」
「なんだ?その興味深い流れとは。」
「はい。今回爆発の実行犯としてとらえた二人とその仲間二人のうち一人が国際手配されているテロ組織の一員であり陰で本国のある企業と深い関係を持っていると言われる人物でした。」
「なんだと?」
「その企業は最近特に貿易関係では躍進のある企業で、ある王族がそのグループの総裁として君臨しています。公安も最近目をつけていたようですからかなり強いつながりがありそうです。それがイ ドンウォン氏率いるグループです。」
「その内容は?」
「武器の輸出入、麻薬取引。」
「腐っているな。コン内官、公安の委員長にすぐ連絡しろ。徹底的に調査して検察に引き渡せと。そして王族会までは伏せるようにと。調査は徹底的にだ。そのすべて暴け。いいな。」
「はい。承知いたしました。殿下。すぐに連絡を取ります。」
「実行犯の男たちは決して口を割ることは無いでしょう。おそらく近いうち自害する可能性が高い。徹底的に仕込まれているプロですから。ただ、クォンの携帯からいくつかの怪しい番号が上がっておりそれを今調べています。もしかしたら取引のルートは解明できるかもしれません。」
「そうか。良くそれだけのことをこの短期間で調べたな。さすがユ ヨンジュンだ。」
「ありがたきお言葉でございますが今回私がこれだけの情報を短期間に得ることが出来たのは弟ヨンジュの働きがあったからでございます。」
「ユ ヨンジュの?」
「はい。まだ未熟者ではございますがこの先も私同様ユ家の一員として陛下、殿下にお仕えすることでしょう。」
「そうか。落ち着いたらゆっくり会って礼を言いたい。」
「はっ。ありがたきお言葉でございます。ヨンジュも喜ぶことでしょう」
スポンサーサイト



- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
06 08
プロフィール

hana

Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

コメント入力に関しましては、お名前と内容だけで大丈夫です。アドレスやPWは無用ですよ~

訪問者数
新着
☆彡カテゴリ☆彡
♪りんく♪
月別アーカイブ