FC2ブログ






「義誠大君殿下!それでよろしいのでございますかっ?余りにもそれでは・・・」
「パク最高長老、お手数をおかけした。申し訳ない。」

軽く頭を下げるユルにパク最高長老は慌てた。

「大君殿下!畏れ多い事でございます。しかしですな・・出来れば我々としては大君殿下に先に妃を娶って頂き、現皇太子殿下に置かれましては・・・」
「それ以上言うな。」
「殿下・・」
「父上の想いは解ってはいた。しかし、僕はもう決めたんだ。今のシンはもう以前のようなシンではない。彼女がシンを変えたんだ。あの頃の僕を変えたように。皇太后様と陛下には僕から直接お話をする。王族会の方々の顔を潰すような事をしてしまって悪かった・・」
「・・・・」

残念そうに肩を落としてパク最高長老はユルの部屋を辞した。ユルはソファに座ったまま両手を組んで俯いた。

ずっとチェギョンが好きだった。
彼女が僕のことを兄としてしか見ていなかったと言う事はだいぶ前から気付いていた。
僕の事を一人の男として見ていないから恥かしがりもせず、僕と一つ屋根に暮らす事も出来たのだ。
シン、お前が羨ましい。
どんなに時を共有しても、どんなに切ない想いを彼女に込めても、たった一つの記憶が彼女の心を奪っていく。
最初から解って居た事だ
最初から。
彼女はきっと、必ず、自分の心の中に棲む名前も知らない男の子の元へ還って行くのだと言う事を。

ユルは、紅色に染まり始める空を窓ごしに見上げた。

『ムクガポッチピアスミダ・・』か。
花のように笑う君の笑顔が、僕の方に振り返るたび、どんどん好きになっていった。
早く僕を掴まえて欲しくて、その手を握りたくて・・・・

ユルはポケットから携帯を出すと、ボタンを押した。宮に取りつがれその電話はチェ尚宮の携帯を鳴らす。

『義誠大君殿下…?』
「ああ、チェ尚宮。皇太后様に会いたい。僕の婚姻のことで・・・だ。これから覗う。」
『はい、畏まりました。お待ちしております。』

携帯を閉じて立ちあがる。ユルは穏やかに微笑んだ。


チェギョン・・・幸せに。













宮内庁病院。
病室のベットの上には左肩を固定されたシンが手元にある本を足元に投げ捨て、体をクルリと回すと床に足を降ろし、せわしなく病室の中を歩きだした。

「殿下・・・しばしご休息をしませんと・・」
「コン内官。もういいだろ?東宮殿に戻る。」
「は?殿下。もう少し治癒してからの方が・・それに今東宮殿は・・」
「改修中なのは知っている。だが、いろいろと私の意見も取り入れて欲しい。皇太后様が取り仕切って居ると聞くが、心配なんだよ。」
「ですが・・」
「コン内官、おばあ様の趣味は知っているだろう?」

コン内官は、しばし現在進行中の東宮殿の内装工事の模様を想い出していた。

「・・・はい、知っております。」
「だからだ!」
「はぁ・・・」
「支度を、コン内官。」
「御意。」




あの翌日、病室を訪れたおばあさまからユルの事を聞いた。

「太子、大君はあの娘を諦めたという。貴方達の間で一体何があったというのか?仮にもチェギョン嬢と大君は陛下が婚姻を了承した仲。それを白紙に戻して欲しいとは・・・」
「・・・・」
「自分の想いが届かなかったと大君は言った。太子、貴方へのただ一度だけの想いが、彼女の心の中でずっと変わらずに生き続けていたのだと。」
「おばあさま・・」
「私は何も言うまい。公式発表もしていなかったから、かえって良かった。この事は、誰にも気づかれないであろう。」

「申し訳ございません。」

「私はね、太子。チェギョン嬢が貴方達どちらかの妃になる事を望んでいたのだよ。」
「え?」
「太子でも大君でも・・・・シン長老、彼は陛下の無二の親友でもあった。あの高潔な血がこの宮に流れるとは嬉しいかぎり・・」
「はい。」
「太子、そなたが療養中、東宮殿の内装を変える事許してはくれぬか?」
「え?」
「もう20年以上あのままであったのだ。今回は私の好きにさせてはくれ。よいな。」
「あ・・・あの・・・・」
「チェギョンさんを迎える為にも綺麗にせんとのう・・・」
「・・は・・はい。」





左肩を庇いながら、シンは改装中の東宮殿へ慌てて駆け込んだ。内装工事はほぼ終了して、作業員が残った資材を片づけていた。急に現れたシンを見て全員はその手を止め、姿勢をただすとシンの動向に注目する。
パビリオンは何の代わりもなく幾分傾いた日の光がステンドグラスを照らしている。

自分の寝室は・・・

シンは恐る恐る扉を開けた。

「・・・うっ!」

そう口元から漏らす声。手を止めていた作業員達は慌てて作業を開始し、瞬く間に資材を抱えて東宮殿から退散した。

夕方の弱い光りに反射する白い壁紙、白いレザーのソファ、白いテーブル、何もかもが白く、ベットに至ってはクイーンサイズの天蓋付きベットで、ご丁寧に白いレースのカーテンまでが掛かっている。

「はぁ・・・・」

大きく溜息をつくシン。
その背後に人の気配を感じてシンは振り返った。

「チェギョン・・・」
「シン君、お帰りなさい。どうしたの?退院は今日でなかった筈でしょ?」
「なぁ…チェギョン。」
「ね、シン君、素敵でしょ。」
「・・・ああ、そうみたいだな。」
「私一度でいいからこんなベットで寝てみたかったわ。まるでお姫様ベットよ。」
「チェギョン、君は正真正銘のお姫様になるんだぞ?」
「ああ、そっかぁ・・・ソウデシタ。」
「何がソウデシタだよ。これ、俺は気に入らない!」
「え?どこが?」
「この白さが気にいらない。落ちつかないよ。」
「あら、シン君!」

チェギョンは両手を腰に当てて胸を張った。

「白いと言う事はどんな色の照明だって綺麗に映り込むってことでしょ?」
「ああ?」
「青、緑、赤、ピンクの照明だってOKじゃない。」
「おい、此処はダンスパーティ会場じゃないんだぞ!」
「そんな事言ってない。だから・・・」
「ああ、もう駄目だ。内装工事のやり直しをさせないとな。」
「・・・シン君。」

急に項垂れたチェギョンにシンは気付く事もなく、コン内官を探しに寝室を出て行った。



「そんな事じゃない。白は・・・月下美人の花の色だよ。どんな色にも染まりゆく真っ白な・・・・」



チェギョンはとぼとぼと寝室を出ると、今まで皇太子妃の部屋だった大きなリビングに入っていった。

「小さい頃の思い出だけじゃ、駄目?あの頃のシン君に恋をしたときのままの私では駄目?シン君は好きだけれど、愛している?」

窓際においてある一抱えもあるような大きな鉢の中に、2メートルにも達した月下美人がたおやかにその葉を伸ばして揺れている。
大きく膨らんだ蕾が頭を持ち上げていた。

「今夜・・かな。開くの・・・・」
スポンサーサイト



- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
06 08
プロフィール

hana

Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

コメント入力に関しましては、お名前と内容だけで大丈夫です。アドレスやPWは無用ですよ~

訪問者数
新着
☆彡カテゴリ☆彡
♪りんく♪
月別アーカイブ