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Lightning Strike Prologue

時は、21世紀。
大いなる高貴な血脈は、綿々とその流れを絶つことなく現代に至るまで大河とその姿を変えこの韓国の地を流れてきた。
先の亡き皇帝聖祖は、正室と3人の側室を娶り、なお一層その支流を増やしていく。
その支流こそが本流をも呑み込み濁流と化す、と誰が想像したであろうか・・・・






「殿下、少し宜しいでしょうか。」
「・・・なんだ?コン内官。」

王室リゾート、プールサイド。
椰子の木陰で本を胸にうたた寝をしていたシンは、コン内官の遠慮がちな声に瞼を開けた。コン内官の顔が逆光となり、シンは思わず顔をしかめる。
久しぶりに青空が広がったここ済州島。毎日続く雨に辟易していたシンは、一人プールサイドに陣取って3冊目の本を読んでいたのだが、あまりの心地よさについまどろんだ。

「実は、義誠大君殿下より幾度となくチェギョン様との目通りの希望がなされております。」
「・・・ユルが?まだユルはここにいるのか?」
「左様でございます。しかしながら皇太后様からのご命令によりお目通りは叶いません。」
「・・・だろうな。あの皇太后様が許す訳がない。アイツは俺の許婚なのだから、やたらに他の男とは接触させたくない、とお考えなのであろう。」
「殿下、このたび義誠大君殿下は殿下にお会いしたいとお申し出になりました。いかがなさいますか?」
「俺に会いたいって?」
「左様にございます。」
「・・・・」


ユルとアイツ。
恋人同士だったはずだ。
ユルの人生からアイツを奪う事。俺として見ればこれ以上面白い話はなかった。皇太子妃などヒョリンだろうが、アイツだろうが、誰でもいい。
生き馬の目を抜くような宮での生活。一見不動に見える皇太子の身分も、皇子が多ければ多いほどすり替えるのは簡単だ。
側室上がりの皇子たちが、虎視眈々とこの座を狙っているのはいうまでもない。それはいつの世も同じだ。
おじい様の第一側室として召されたユルの祖母。あっという間におじい様の寵愛を受けすぐにユルの父を身籠ったと聞いている。それでもおばあ様はじっと我慢し、5年後にようやく現陛下を命を削る思いで産み落としたのだ。苦しい涙を何度も流したおばあ様を知っているからこそ、側室の連中は許せない。

人の真心なんてこの世にあるわけがない。
平気で愛した筈の人間を踏みにじる・・・それが宮だ。

「コン内官、これから別館のトレーニングルームに行く。ユルをそこへ・・・・」
「殿下、お会いになるのですか?」
「ああ、この際だ。はっきりさせたい。」
「畏まりました。」


さて、ユル。
お前のマヌケ面でも拝むとするか・・・・・




シンは起き上がると、本を小脇に抱え、別館に通じる白い石畳を歩き出した。夏の日差しが容赦なく照りつける。額がじっとりと汗ばみシンは不快そうに顔をしかめた。
護衛達が守る本館と別館を隔てる薔薇の垣根を越え、椰子の木立をくぐり、額に滲んだ汗を右腕で拭うと、ガラス張りのトレーニングルームが見えて来た。大きな扉を護衛が開ける。
シンはそこで待て、と護衛に手を上げて、一人でその中へ入った。

「シン!」

コン内官から連絡を受けて走って来たのであろう。ユルの肩が激しく揺れていた。

「暫くぶりだったな、ユル。あの時以来・・・・か?」
「ああ、あの時チェギョンの折角のケーキが駄目になった・・・」

ユルの口からチェギョンの名が出た時、シンは何故だか妙にイラついた。

「何の用だ?まさかあの時の弁償をしろなんて、今更言うんじゃないだろうな。」

シンはユルを馬鹿にしたように見つめた。しかし、ユルはそんなシンの挑発には乗らず、じっとシンを見据えるとはっきりとした口調で言った。

「チェギョンを僕に返してくれ。お前はおじい様の遺言だというだけでこの件を承諾した。皇太子妃が誰になろうが、遺言さえ守ればそれでいいって思ってる。彼女が可哀そうだ。彼女は本当の事を知らずに此処へ来た・・・・・お前との事を納得してきたのではない。お願いだ。彼女を自由にしてくれ。僕の元に・・・・」
「自由・・・に?お前の元に?ははは・・・何か勘違いしてないか?ユル。お前にアイツを返す?・・・・・断る!」

「シン!」

「お前とアイツの間に何がある?愛か?恋か?アイツはここへきて一度もお前とのことを俺には言わなかった。お前達本当に付き合っていたのか?普通だったら、お前との事を上申して、泣いて騒いで皇太后様を困らせ、許婚の件は白紙に戻ったかもしれないじゃないか。」

「・・・・」

「アイツは今チェ尚宮についてお妃教育を受けている。これが何を意味しているかわかるか?」
「お妃教育?・・・・う、嘘だ!チェギョンはお前の事を大嫌いって言っていたんだ!」
「ふふん!大嫌いでも逃げ出さずに此処にいる。」

「・・・・」

「本当は友達程度だったんじゃないか?いや、それ以下・」
「シン!馬鹿にするなっ!」

ユルはシンに詰め寄ると、シャツの胸元を右手で捻じり上げた。中の様子を覗っていた護衛達が大勢トレーニングルームの入り口に詰め寄る。シンは再び手を挙げ護衛を抑えるとユルの右手を振り払った。

「勘違いしては困る。俺はアイツを閉じ込めたり無理やり何かをさせようとなんかはしていない。そりゃあ、最初の頃は訳が判らなくて随分混乱したみたいだが、なぜか最近は落ち着いているんだ。お前はこれをどう思う?」
「お前は嘘をついてる。だったら彼女に会わせろ!」

「・・・・それは駄目だ。」

「やっぱり・・」
「皇太后様の命令だ。従わなければならない。宮のしきたりだ。」
「しきたり、しきたり、しきたり、しきたりっ!シン、いつもお前はそうだった!そのうちしきたりに首を締められる事になる。絶対に!」
「ああ、そうかもな。」

「僕は絶対チェギョンを此処から連れ出してやる。チェギョンは僕のものだ!
「チェギョンは僕のもの?・・・・違うな、アイツは・・・・アイツは俺のものだ!」


「・・・シン!?・・・お、お前?・・・・まさか・・・」


呆然とするユルを残し、シンは大股でトレーニングルームを出て行った。歩きながらユルに言い放った自分の言葉を繰り返してみる。


アイツは俺のもの?
所有物・・・にしては酷い。ヒョリンの時とは大違いだ。

所有物に金銭を与え、自分の隠れ家を作らせた。
誰にも束縛されない自由な時間。
無駄なお喋りもなく、俺が気を使う必要もない。

だが、今はどうだ?
アイツは無駄なお喋べりは多いし、俺が何かを言うと、それを倍にして言い返す。
あんな女は初めてだ。

バルコニーを越えて逃げ出そうとした姿には思わず笑えたよ。アイツは本当に馬鹿だよ・・・馬鹿・・・だ・・・・



いつの間にかチェギョンの事ばかりを考えている自分に気づきシンは苦笑した。そして、彼女がいるだろう本館のバルコニーを見上げた。
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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