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ヒョリンVSシン (第1回PHD自主参加作品)

「ね、いいの?チェギョン。殿下を行かせてしまって!」
「だ、だって・・・」
「だって、じゃないでしょ?貴方の旦那様なのよ?」
「・・・・」
「後悔するからね。」
「で、でも・・・まるで焼きモチを焼いてるみたいだし、シン君を信じてないって思われたら・・・・」
「もう、じれったいわね。ほら、行くよ!」
ガンヒョンはチェギョンの手をぐいぐい引っ張って劇場脇にある控室へと突き進んで行った。


ミン・ヒョリン。
タイでの国際バレエコンクールに見事優勝し、イギリスアカデミックバレエスクールへ特待生として2年間留学。みごと、イギリス王立バレエ団に入団し、1年目にしてエトワールの座を手にした。
今回はその凱旋帰国。ヒョリンにとっては、3年ぶりに韓国の地を踏んだことになる。公演の後団員達は、劇場脇にある応接室へ、本日の主賓である皇太子夫妻に挨拶をするため訪れていた。
劇場支配人のすぐ傍に白いチュチュを着て佇んでいたヒョリンは、驚いたような顔をしてチェギョンを見つめている。ただその表情はすぐに消え、にっこりと笑ってチェギョンにその白い手を差し出した。

「お目にかかれてうれしゅうございます、妃宮様。ご健勝のようで何よりです。」

差し出したその手をチェギョンは握り返したが、氷のようにその手は冷たい。

「ヒョ・・・ミン・ヒョリン嬢。凱旋帰国おめでとう。今日はとても素晴らしい踊りでした。」
「まぁ・・・光栄でございます。妃宮様はこのような公演はあまりお好きではない・・と劇場支配人より伺ったのですが、最後までご観覧いただけて恭悦至極に存じます。イギリスにいらした際にはぜひ劇場にもお足をお運びくださいませ。」
「え?ええ、ありがとう。」

舞台メイクの下からヒョリンの冷たい視線がチェギョンに投げつけられた。
スッとチェギョンの前を通り、ヒョリンはシンの前へ立つ。チュチュの裾をほんの少し摘まむと軽くお辞儀をした。

「お久しぶりでございます、殿下。」
「ああ・・おめでとう。夢が叶ったようだ。」
「・・・・・」

ヒョリンは、シンの言葉には答えず、他の団員にその場所を譲って、後ろに控えているコン内官の傍へ立った。

「コン内官様。お願いがございます。」
「なんでしょうか?ヒョリン様。」
「シンを・・・殿下を少しお借り出来ないかしら。積もる話もあるんです。」
「そ、それは・・・・」
「とにかく伝えて。あと1時間後にはここの劇場を離れます。イギリスへの飛行機の都合もあるので・・・・他の団員達は妃宮様とのお話に夢中ですわ。私、控室に戻りますのでそこへ来るよう・・・来るか、来ないかは、シンが決めればいいですから。」
「・・・解りました。お伝えだけは致します。」
「ありがとう。」


コン内官からヒョリンの伝言を聞いたシンはそっとチェ尚宮を呼んだ。チェギョンはまだ、他の団員に囲まれて談笑している。

「チェ尚宮。」
「はい、殿下。」
「今からヒョリンの控室へいく。用事があるようだ。」
「殿下・・・」
「チェギョンには言わないでくれるか?アイツの事だ。何を誤解するか解らない。すぐ終わるから・・・」
「・・・畏まりました。では、殿下なるべくお早く御済ませくださいませ。」
「わかった。」

シンは、静かに応接室を出てヒョリンの待つ控室に向かった。


「あら?殿下じゃない。どうしたのかしら、こんなところ一人・・・で?」

廊下を歩いてある部屋に入ったシンの後ろ姿を見たガンヒョンは、小走りにその消えた部屋の前で一点を凝視した。

「ミン・ヒョリン様・・・控室?ちょ、ちょっと!それってないんじゃない?殿下!」




「ここ・・・か。」

ドアをノックしたシンは、ヒョリンの声に中へ入っていった。

「シン!」

舞台衣装のまま、ヒョリンはシンの首に抱き付き頬を寄せた。

「な!なにを?」
「いやぁね。これがイギリス式よ。軽い挨拶だわ。海外訪問をしている貴方だったら解っている筈じゃない。それとも私とすると緊張するかしら・・・・」
「い、いや・・・」

ヒョリンはシンの耳元でくすっと笑うと両腕をシンの首から離した。

「久しぶりね、シン。」
「ああ、元気だったか?」
「ええ。夢が叶って嬉しくって仕方がないわ。あれから3年ね。チェギョンはいつ帰国したの?」
「三日前だ・・・」
「あらっそうなの?ごめんなさいね、帰国早々公務に借り出してしまったわね。彼女、劇場では居眠り専門だったって訊いているわ。」
「それは3年前の話だ。今は・・・」
「今は、ちゃんと妃宮の役割を果たしているって?は、冗談!笑わせないで。」
「ヒョリン・・・」
「私ね、自分の夢は叶えたわ。だけど貴方の望みは叶えてやれなかった。ずっとそれが心に引っかかっていたの。シン、3年前は楽しかったわ。ギョンやイン、ファン、貴方と4人で。毎日が充実していたの。それと言うのも、貴方が芸術高校へ入学してくれたからよ。」

ヒョリンは、ドレッサーに向かうと鏡の中のシンを見つめた。

「あの家出の時、私が芸術高校に入学するって知ったから、そう決めたんでしょ?」
「ヒョリン・・・・」
「嬉しかった。貴方とまた出会えて、一緒に通学して、3人には秘密の恋人なんて言われて・・・・」
「もう終わったことだ。」

鏡の中のシンは俯いた。

「ね、あの時のプロポーズまだ間に合うかしら?」
「え?」
「貴方の望みを今叶えてあげてもいいって言ってるの。貴方達上手くいってなくて、チェギョンはユルが好きで、問題を起こしたって訊いてるわ。ま、イギリス王室だってスキャンダルだらけだけど、3年間別居していたんでしょ?疲れるんじゃないの?仮面夫婦は・・・」
「ヒョリン!」





「ほら、ここの部屋よ。中に入りなさい。なんだったら、私が・・・・」
「ガ、ガンヒョン。わかったわ。後は私が・・・・もう行って。一人で大丈夫だから。」
「・・・そう?じゃ、行くわね。いい、しっかりと言ってやりなさい。」
「うん・・・」

ガンヒョンはチェギョンを控室の前に置いて、ホールへ戻っていった。時折振り返る彼女にチェギョンはガッツポーズで返す。

(む、無理よ。これじゃ立ち聞きしているみたいだし・・・・シン君は私に内緒で来たみたいだし、あーん、どうしよう。)





ガタン!と音を立ててヒョリンは立った。

「今日の演目はロミオとジュリエットだったわ。まるで私達みたいじゃない。互いに愛しているのに、邪魔立てされて、互いにすれ違って・・・でも最後はハッピーエンドだわ。」

シンの両肩に手を乗せてヒョリンは踵を上げて背伸びをした。

「悪いな。」
「え?何が?」
「あいにく、俺はロミオじゃない。」

シンの唇を求めて背伸びしたヒョリンの体が止まった。

「3年前、確かに君にはプロポーズした。」
「だからシン、そのプロポーズを・・・」
「君は拒否した。」
「夢を叶えるためよ。その夢は叶ったから次は・・・・」

シンはフフンと笑うとヒョリンの両手を肩から振り払った。

「申し訳ないが、君へのプロポーズは、愛していたとか好きだったからとかじゃない。」
「え?」
「顔も知らない様な他の女と結婚するくらいなら・・・・ってあの時言った筈だ。その程度だ。」
「シン、だけどチェギョンとは、無理やりの許婚だったんでしょ?不本意だった筈よ。なのに・・・」
「不本意・・・そうかも知れないな。大人達が勝手に決めた妻だ。」
「だったら・・・私と再婚して!」

シンはすがるヒョリンに背を向けた。

「それは出来ない。」
「宮の<しきたり>があるから?そんな<しきたり>なんて壊せばいい!」
「そうじゃない。ヒョリン。」
「え?」
「俺は・・・俺は最初からアイツが好きだったんだ。」
「最初から?・・あの盗み聞きされた時から?」
「いや・・・婚礼の儀をする前からあたりかもしれない。毎日のように何かの用事で会っていたからな。妃教育の期間中も。」
「嘘・・・」
「彼女の明るさは今まで俺が経験した事のないような底抜けの明るさだった。その眩しいくらいの明るさにどうしていいか解らなくなって、彼女には随分酷い事をした。結婚する前から離婚してやるなんて言う夫は世界中探したって俺しかいない。」
「・・・・」
「そして、彼女にどんどん惹かれていく自分が許せなかった。大人同士が勝手に決めた相手を条件なく好きになるなんて・・・」
「シン、嘘よね。貴方はチェギョンがうっとおしい筈。私だけでしょ?心を許せる相手は・・・」

ヒョリンは、シンの背中を見つめた。

「心を許せる相手?はは・・・俺も馬鹿だった。ヒョリン、君を心の許せる相手だなんて思っていたなんて。何にも解っちゃいなかったんだよ。心の許せる相手と言うのは、自分の他人には知られたくない部分をも全て曝け出してぶつかりあえる相手の事だ。一緒にいて居心地がいいと言うのは、互いに有利になるよう隠している部分があるから・・・だ。」
「シン・・・それじゃチェギョンには貴方の全てを委ねることが出来るっていうの?あんなガサツなデリカシーのない女に。」

シンは控室の扉のノブに手を掛けた。

「ヒョリン、俺はチェギョンを愛してる。この3年間どれだけ彼女を恋い焦がれたか。マカオに行ってしまうって分かった時、どれほど心が引き千切られる想いをしたか・・・」
「そんな・・・」
「俺は皇太子として妃宮を愛してると言うのではなく、イ・シンとしてシン・チェギョンを愛している。この想いは彼女との出逢いからはずっと変わらない。きっとチェギョンは知らないだろう。俺が初めから彼女に恋い焦がれていたなんて。彼女の口からユルの名前が出ただけでおぞましい嫉妬に狂っていたなんて。俺の誰にも知られたくない彼女への想い・・・だ。」

シンはいきなり控室の扉を開けた。其処には床にペタンと座り込んでいたチェギョンがいた。

「まっ!な、なんなのっ!立ち聞きするなんて!それが王室の方のやる事かしらっ!」
「ご、ごめんなさ・・・い。ご、ごめん・・ね。」

ヒョリンはつかつかとチェギョンの傍に寄ろうとしたが、シンが片腕を上げてヒョリンの行く手を阻んだ。

「ここまでだ。君が近づけるのは。」
「シン!チェギョンは立ち聞きしたのよっ!はしたな・・・」
「妃宮様と呼べ。」
「え?」
「俺の大切な妻だ。妃宮様と呼ぶんだっ!」
「!」

シンは涙でぐちゃぐちゃになったチェギョンの体を抱き上げた。

「チェギョン、どこから聞いていた?」
「シ、シン君、ごめんなさい。シン君を信じていない訳じゃない、訳じゃないけれど・・心配だったの。う、うぇーん!」

激しく泣きじゃくるチェギョンの背中をシンは優しく擦った。

「聞かれちゃったら仕方がない。チェギョン、今の話が俺の本心だ。ずっとお前には言わなかったけれど・・・・」

「・・・シン、貴方がこんな女に堕ちるなんて最低だわ!」

二人の様子を驚いて見つめていたヒョリンは気を取り直すとそう叫んで、控室を出て行った。

「シン君・・・ご、ごめん、ヒョリン・・・が・・・」
「いいさ。ちょうど良かったんだ。」
「え?」
「俺の心はお前の所でしか生きられないって事さ。」

チェギョンの涙で濡れた睫毛を親指でシンは拭うと、その愛らしい瞼に唇を寄せた。



愛してる、愛してる、
もう隠すことはないんだ。

愛してるよ、チェギョン。
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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