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残照・・・1

チェギョン・・・・
お前に出逢ってなかったら
俺はいったいどうしていただろう・・・・

お前のその屈託の無い笑顔
お前のその無垢な瞳
お前のその暖かな声

冷えきった俺の心を
その笑顔で優しく包んでくれた

何も無い砂漠のような俺の心に
清らかな涙という雨を降らせてくれた

しきたりの重みの中でしぼんでしまった俺の心は
お前の暖かな言葉で再び大きく膨らますことが出来るという事を知った


お前はたった一人で
悲しい想いをしているのか
お前はたった一人で
辛い想いをしているのか


俺は・・・・
俺の心は・・・・



今、張り裂けそうなくらいお前を求めている

早朝、抜けるような蒼色だった夏の空は、昼前にはにわかに暗くなり時折雷鳴すら聞こえていた。

「コン内官様、パレードまでに雨が降ってきたらいかがいたしましょう・・・・」
心配そうにチェ尚宮は言った。
「もし、降ってくるようであれば安全を考えてお車にしよう。」
コン内官はいつになく速い黒い雲の流れを心配そうに眺めた。

沿道ではシンとヒョリンの婚礼パレードを一目みようと大勢の観衆が集まっていたが、時折吹く突風と小粒の雨に、道路わきの店の軒下に避難する者も出始めていた。





「殿下・・・妃殿下がいらっしゃいました。」
尚宮の声にシンは静かに立ち上がった。
雲峴宮の廊下をヒョリンが婚礼衣装を身にまとい尚宮達に支えられて滑るようにシンの前に現れた。

本当であったらここにチェギョンがいる筈だった・・・・・

シンはヒョリンを一度も見ることもなく親迎の礼を済ますと中庭に降りようとした。


≪ド――――――ン≫


鋭い稲光とともに轟音が響き渡った。
雲峴宮の一角にある大イチョウに雷が落ち、黒い煙が上がっている。

「殿下、妃殿下お怪我はございませんか!!」
護衛達が二人のまわりを固めた。

「大丈夫だ、進めてくれ・・・・・」

ヒョリンは雷の音と光に怯えシンに思わずすがろうとしたが、そんなヒョリンを置いてシンはどんどん先を歩いていく。
「殿下、本日は馬車でのパレードは無理でございます。沿道にも大勢の国民が待っていますが、このままでは大変危険です。パレードを中止いたしまして景福宮までお車での移動にしたいと存じます。」
「わかった。」
シンはコン内官の言葉を聞いて車寄せに向かった。
自分を置いて行ってしまうシンをヒョリンは呼びとめた。

「シン!!ちょっと待って・・・・そんなに急ぎ足で歩かないで・・・・」
「シン?・・・・・妃宮、私の事は殿下と呼べ。馴れ馴れしく名を呼ぶな!」
「あ・・・・・申し訳ありません・・・」
ヒョリンは恨めしくシンの後姿を見つめた。

二人が車に乗るころには大粒の雨が落ちはじめ、時折激しい雷の音が響いた。
「コン内官、沿道の国民はいかがした?」
「はい。係の者が避難するよう広報車で回っております。」
「そうか・・・・」


この雨はチェギョン、お前の涙か?
この雷はチェギョン、お前の悲しみか?



荒れ狂う悪天候のなか景福宮、勤政殿についた二人は、謁見の間に進んだ。
「本日はつつがなく婚姻の儀をすまされ恭悦至極に存じ奉ります。」
首相の言葉にシンはうなづく。首相に続いて各大臣の祝いの言葉を延々と聞いていたヒョリンは思わず立ちくらみを起こした。

「妃殿下!!」

傍に控えていた尚宮達が思わず駆け寄ったが、シンはそんなヒョリンを冷ややかに見て言った。
「チェ尚宮。妃宮はお疲れのようだ。退席させなさい。」
「殿下・・・・私は大丈夫です。このまま・・・・」
青白い顔をしたヒョリンは立ち上がろうとしたが婚礼衣装の重みで再び座りこむ。

「護衛、妃宮を退席させなさい!」
再びシンは言うと、ヒョリンから視線を外した。

シン・・・
気にもかけてくれない。
どうして?
結婚したんじゃない、私達・・・・・

ヒョリンは唇を噛むと護衛達に支えられて謁見の間を後にした。

「殿下・・・・・妃殿下に少し冷たすぎではございませんか?」
「コン内官、いいんだ。私はヒョリンを妻とは思っていない。」
「・・・殿下。」





その夜、最後の儀式、同牢の礼が義愛合で行われようとしていた。尚宮、女官達は廊下で控え、二人の到着を待った。
暫くすると、韓服を脱ぎスーツ姿になったシンと、韓服を着たヒョリンが現れ、静かにその扉が閉じられた。

「妃宮。」
「はい、殿下。」

バレエを諦めて以来名実ともに皇太子妃になるためにこの日を待ちわびていたヒョリンは、これから起こることに少なからず期待を抱いていた。

あのチェギョンという女はもうシンの傍にはいない。
シンは私を選んだ。
私はあの女に勝ったのだ。
婚礼もこの同牢の礼を済ませたら・・・・・・全てが、宮の全てが私の手の中に収まる。

「妃宮。これだけは言っておく。私はこれから先お前を一生愛することはない。」
「えっ?」
「私は皇太子としての務めをお前は皇太子妃としての務めを果たせばいい。」
「何を・・・・・おっしゃっているのですか?」
「皇太孫はすぐ望まれるだろうが、私とお前との間には無用。」
「・・・殿下!」
「お前との夫婦としての契りもこの先ない。」
「な・・・なぜそのような事を言うのです?!」
「なぜ?・・・・それならこちらが聞きたいくらいだ。お前の父親は最高長老でもあるお前の祖父に進言してこの婚姻を早めた。宮に圧力を掛けながら。そうであろう?」
「・・・・」
「今日はもう疲れたから休ませてもらう。布団は一枚しかないが、お前も適当に横になればいい。」

「・・・・シン。酷い・・・・」
「・・・・・・」
「あの女・・・・・あの女はまだシンの中にいるのね・・・・・」
「・・・・・・」
シンはヒョリンの呟きを無視し、彼女に背を向け横になった。



廊下で耳を澄ませていた尚宮達であったが、静まりかえった部屋の様子に皆、顔を見合わせた。
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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