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綴愛・・・1

俺は
出逢っていた
お前に
ずっと前から
時を超えて
ずっとずっと前から

出逢いを
何度も何度も繰り返し
いつもお前は俺のこの手の隙間から
こぼれ落ちていった

『絶対に』
いつもそう言って
お前を安心させる俺

『必ず』
いつもそう言って
お前を失望させる俺

『大丈夫』
この言葉がどれほどの意味を持つのだろう

『愛している』
この言葉はまるで互いの心を確かめあう呪文でしかない


それでもチェギョン


お前を愛している
心から愛している



≪シン!!≫≫≫≫

ユルの叫び声が断崖に木霊した。
その刹那目も開けられないほどの海からの風が巻き起こり、突風となってユルを襲った。
ユルはその場に立っている事すら出来ず思わず平伏し、目の前にある膝丈ほどある草をしっかりその両手に握り締めた。
木々は互いの枝を擦らせ、木の葉を舞い上がらせて悲鳴にも似た音を奏でた。


「・・・・シン。・・・・チェギョン。」


二人は崖から墜ち・・・・た。
シンはチェギョンのもとへ。
僕は・・・・
僕は全く動く事が出来なかった。
彼女のもとへ行くことが出来なかった。

強風がおさまると、ユルはゆっくりと起き上がりその場に座り込んだ。

二人を、二人の愛を認めたくなかった。
チェギョンの気持ちが既に僕にはなく、シンだけの物になっている事はうすうす感じていた。
でも、どうしても彼女が手放せなかった。
チェギョンがシンに心惹かれていけばいくほど許せなかった。
僕の心の闇が二人を追い詰めた。
僕の心の弱さがチェギョンを苦しめた。

ユルはよろよろと立ち上がると膝丈ほどの草むらをゆっくり掻き分け、断崖に向かって歩き出した。
日は落ちて紫がかった天空に金星が光り始めた。時折、サワサワと静かな風がユルの頬を撫でていく。

「あっ!!」

崖すれすれのところに何か見える。ユルは大急ぎで駆け寄った。
そこにはチェギョンをその胸の中にしっかりと抱き締めたシンが倒れていた。


「シン!!大丈夫か?・・・・・シン!!」
ユルは大声を出してシンの体を揺すった。

「・・・・・・ユ・・ル・・」
シンはチェギョンを抱き締めたままかすかに目を開けた。

「よかった・・・・・僕は、ふたりが墜ちてしまった・・・・と・・・」
「ユル・・・」
シンは起き上がり腕の中のチェギョンの息を確かめるとそっとその腕に抱き直した。

「・・・・・・もう、僕はいい。お前本当にチェギョンを守っていけるのか?本当に守り抜けるのか?」
「・・・・・・ユル?」
シンは、ユルの顔を訝しげに見つめた。
ユルは疲れたようにその場を立ち上がると暗い海を眺めた。

「シン・・・・・・僕は今までお前の事が大嫌いだった。全ての物を僕から奪い去った。母上のささやかな幸せも奪った。王室の者と認められず、さりとてこの体に流れている血のせいで一般人としても認められず、国民からも言ってはいけない立場の母と僕だった。その上チェギョンまで奪われて・・・・」

「・・・・・・・・」

「シン、お前は例え命を落とすことになったとしても、崖から飛び降りる事を選んだチェギョンを追った。僕は・・・僕は一歩も前に踏み出せなかった。チェギョンに近づけなかった。お前に・・・・お前に負けた。だから・・・・だから諦めることも大切・・・・なんだ。彼女を・・・僕は・・・・手放すことに決めたから。彼女の心をここまで追い詰めたのはこの僕だ。彼女を必ず守れよ、シン・・・・」
ユルはそう言うと木立の方に向かって歩き出した。

「ユル・・・お前・・・・・」






「う・・・・・シ・・ン君。」
「チェギョン、気が付いたか?」
「私どう・・して・・・ここに?・・・・・なん・・だか無性に悲しくて・・・・寂しくて・・・切なかった・・・・・・・・」
チェギョンはシンの腕の中で悲しそうに彼の瞳を見つめた。
シンの心配そうな、優しそうな、嬉しそうな瞳。

「なにも・・・なにも憶えていないのか??・・・・風が、強い風が俺達を守ってくれたんだ。俺達を押し戻してくれた・・・・・」
「・・・どういうこと?押し戻し・・たって・・・・・・・」
チェギョンは不思議そうにシンの顔を見つめた。
そんなチェギョンを両腕にしっかりと抱き締めるとシンは言った。

「それから・・・・それからユルが俺達の事を認めてくれた。お前を守れって言ってくれた。」
「ユル・・君が・・・・?」
チェギョンは思わずユルを探した。

「ユルは、もう帰った・・・・・お前の心を追い詰めてすまないと言って・・・・・」
シンの言葉に思わず口元を抑えるチェギョン。彼女の口元からは小さな嗚咽が漏れ始めた。



優しく頬を撫でる木立からの風を受けて、シンはチェギョンを支えて立ち上がった。
零れ墜ちそうな満点の星が二人を見下ろしていた。
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Author:hana
韓国ドラマ【宮】をベースにした妄想話を綴っています。王道ありパラレルあり、風の吹くまま気の向くまま…

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